UXデザイナーは、ただ「使いやすい」製品を作るだけではありません。私たちのデザインは、誰を含み、誰を無視しているのか――社会に対して目に見えない影響力を持っています。本記事では、UXデザインにおける「倫理的責任」や「包括的(インクルーシブ)デザイン」について、視野を広げるための視点と実践方法を紹介します。
支配的文化と見えない偏り
現代社会において、特権的な立場にある人々が形成する「支配的文化」が、製品やサービスの前提条件になっているケースは少なくありません。これは、特定の文化や価値観を前提とした設計となり、それ以外の文化や背景を持つユーザーを無意識のうちに排除してしまう可能性があります。
- 家族構成の前提が「父・母・子」になっている
- ネット環境が前提のUIでオフライン環境に不適応
- 高齢者や障害のある人へのアクセスを想定していない
包括的なデザイン思考とは?
インクルーシブデザインとは、すべてのユーザー――たとえば障害者、少数民族、非母語話者、社会的に疎外された立場の人々――の体験を考慮した設計アプローチです。
- 包括的なペルソナ設計:平均的なユーザー像にとらわれず、代表性の低い人々を含める
- 多様なステークホルダーの定義:意思決定層だけでなく、実際のユーザーや現場の声を取り入れる
- コラボレーションの重視:設計に関わる多様なチームを編成し、多角的な視点を持ち込む
エッジケースから学ぶ
「想定外」のユーザー体験は、実は多くの人が直面している現実でもあります。アクセシビリティの課題は特定の人に限った話ではなく、誰もが一時的に「使えない」状況に置かれることがあるのです。
- 片手が使えない状態でのスマホ操作
- 暗所でのスクリーン利用
- 公共Wi-Fi環境でのフォーム送信トラブル
マルチバーサルな設計とは?
ユニバーサルデザインが「一つの解決策ですべてをカバーする」ことを目指すのに対し、マルチバーサルデザインは「複数の入り口を用意し、どのユーザーでも意味ある体験を持てるようにする」設計思想です。
説明責任と学びの継続
すべてのユーザーにとって意味のあるデザインを追求するには、自分の思い込みに気づき、対話を重ね、常に学び続ける姿勢が求められます。UXデザイナーには、製品だけでなく、社会そのものにインパクトを与える可能性があります。
まとめ
サンアンドムーンは、UXデザインを通じて、誰もが使いやすく、取り残されない社会の実現を目指しています。支配的な文化や無意識のバイアスに気づき、多様なユーザーの視点を設計に取り込むことは、私たちにとって重要な責任の一つです。
すべての人にとって意味のある体験をデザインするために、今後もリサーチと対話を重ねながら、より包括的で倫理的なデザインの実践に取り組んでまいります。






























