Vol.3|ユーザーは、思った通りに動かない

このシリーズでは、Webサイトを継続的に改善していくための設計思想をお届けしています。Vol.3では、多くの担当者が経験する「なぜ?」の感覚——「あんなにわかりやすく作ったのに、なぜユーザーは迷うのか」——を丁寧に読み解いていきます。「このボタン、絶対わかりやすいと思ったんですけど……」制作側が自信を持って設計したページでも、ユーザーはまったく別の行動をとることがありますよね。問い合わせリンクをクリックしてほしいのに、ユーザーは会社概要ページをひたすら読み返していたり、購入ボタンの手前で離脱していたり。これは設計者の失敗ではなく、「自分と他者の認知は異なる」という人間の本質的な特性によるものかもしれません。UXデザインの出発点を、サンアンドムーンは「ユーザーの視点を知ること」に置いています。

「作った人」と「使う人」の認知のズレ

Webサイトを作る側は、そのサイトのことを誰よりもよく知っています。どのページに何が書いてあるか、どこをクリックすれば何が起きるか、頭の中に全体マップが描けている状態ですよね。これを「知識の呪縛」と呼びます。知りすぎているがゆえに、「これはわかって当然」という無意識のフィルターがかかってしまうのです。一方、初めてサイトを訪れるユーザーには、その地図がありません。どこに何があるかもわからず、自分の目的に関係のある情報を直感的に探しています。この認知のギャップが、「なぜ伝わらないのか」「なぜ動かないのか」の根本にあるかもしれません。設計者が「わかりやすい」と感じても、ユーザーにとってわかりやすいとは限らない——この事実を謙虚に受け入れることが、UX改善の出発点ではないでしょうか。

ユーザーはナビゲーションを「読まない」

「ナビゲーションを整理すれば、ユーザーは迷わなくなる」と思いたくなりますが、実はユーザーはメニューをじっくり読まないことが多いのです。多くの場合、ページを訪れた瞬間に画面全体をパッと眺め、「ここに答えがありそう」という直感でリンクをクリックします。これを「F字型・Z字型の視線パターン」といい、目が自然に動く軌跡には一定のパターンがあることが知られています。つまり、きれいに整理されたメニューより、「見た瞬間に目的地がわかるページの構成」のほうが、ユーザーには優しいかもしれません。大切なのは、メニューの網羅性よりも、「最初に視線が落ちる場所に何を置くか」というコンテンツ配置の意識ではないでしょうか。ユーザーの視線の動きを意識するだけで、ページの伝わり方は思いのほか変わってくることがあります。

「離脱」はユーザーのせいではない

アクセス解析で「離脱率が高いページ」を発見すると、「このユーザー、なんで離脱するんだろう」と思いたくなりますよね。でも少し立ち止まってみてください。離脱はユーザーへの批判ではなく、ページからの改善サインかもしれません。離脱の理由はさまざまです。「知りたい情報が見つからなかった」「テキストが多すぎて読む気が失せた」「スマホで表示が崩れていた」「フォームの入力項目が多すぎた」——いずれも、ユーザーにとっての小さな「摩擦」が積み重なった結果かもしれません。UXデザインでは、この摩擦を「ユーザーに努力を強いてしまっている状態」として捉えます。摩擦を一つひとつ取り除いていくことで、サイトはユーザーに優しくなり、成果に近づいていきます。「離脱」は、改善の地図に描かれたヒントとして読んでみてください。

ユーザーテストは難しくない

「ユーザーの視点を知る」と聞くと、大がかりな調査が必要に思えるかもしれませんね。でも、最もシンプルな方法は「5人に見てもらうこと」かもしれません。ユーザビリティ研究の世界では、5人程度のテストで主要な問題の約85%が発見できると言われています。身近な人に「このページを見て、問い合わせしようとしてみてください」と頼むだけで構いません。どこで迷うか、どこで止まるかをそっと観察するだけで、貴重な発見が得られることがあります。重要なのは「上手く使えたか」ではなく、「どこで迷ったか」を見ることです。ユーザーテストは、コストをかけた大規模調査でなくていいのです。5人の行動を観察する習慣が、Webサイトの質を着実に高める原動力になっていくのではないでしょうか。

まとめ

「作った人」と「使う人」の認知には、必ずズレがあります。ユーザーはナビゲーションをじっくり読まず直感的に動くため、視線が最初に落ちる場所の設計がとても大切になります。ページからの離脱はユーザーへの批判ではなく、設計上の改善サインとして受け止めることが重要です。「5人に見てもらう」という小さなユーザーテストから始めることが、ユーザー視点を取り入れた改善への第一歩になります。

記事監修

中谷 浩和

中谷 浩和

株式会社サンアンドムーン|代表取締役

1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。

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