Vol.4|Webリニューアルを、正しい順序で進めるために

「リニューアルしたいんですが、何から始めればいいでしょうか」——このご相談の後、「まずどんなデザインにしたいですか?」と聞かれた経験はないでしょうか。実は、それが順番として逆であることが多いのです。デザインは最後に考えるもの——というと少し意外に聞こえるかもしれませんが、これがリニューアルを成功に導く重要なポイントです。UXデザインの出発点を、私たちサンアンドムーンは「デザインの前にある問いに答えること」に置いています。

リニューアルは「なぜ」から始まる

Webサイトのリニューアルを決めるとき、背景には何かしらの「理由」があるはずです。問い合わせが減っている、採用に使いたい、会社の雰囲気が変わったからサイトも変えたい——どれも正当な理由ですが、それぞれによって、やるべきことがまったく違います。

「なぜリニューアルするのか」を明確にしないまま進めると、制作途中で「何を優先すればいいかわからない」という迷いが生まれます。デザインの方向性についての議論が長引いたり、完成後に「なんか思っていたのと違う」という感想が残ったりすることも、多くの場合「なぜ」が曖昧だったことに起因しています。

「なぜやるか」が明確であれば、判断の軸が生まれます。何か迷ったとき、その「なぜ」に立ち返ることができる。シンプルな問いですが、プロジェクト全体を支える土台になる、大切な一問です。

現状把握なしに、改善はできない

リニューアルへの気持ちが高まると、早く新しいものを作りたくなる気持ちはよくわかります。でも、現状を把握せずに進めてしまうと、「以前と同じ課題が残ったまま、見た目だけ変わった」という結果になりかねません。

今のサイトのどのページが見られているか、どこでユーザーが離脱しているか、どんな検索ワードで来ているか——これらは、リニューアル前に必ず確認しておきたい情報です。現状のデータを見ることで、「どこを残すべきか」「どこを変えるべきか」の判断ができるようになります。

また、現状把握は数字だけではありません。今のサイトを実際に使ってみて、お客様目線でどう感じるかを確かめることも大切です。「自分たちが見慣れているから気づかなかった」という不便さが、初めて訪問するユーザーには大きなストレスになっていることも、珍しくないのです。

ターゲットとメッセージを先に決める

現状が見えてきたら、次に決めるのは「誰に」「何を」伝えるかです。この順番が守られないと、どんなに美しいデザインを作っても、中身が届かないサイトになってしまいます。

ターゲットとは「理想のお客様」のことです。年齢や職業、悩みや希望——できるだけ具体的にイメージします。ターゲットが決まると、使う言葉のトーンも変わりますし、どんな情報を前面に出すかも変わります。「全員に向けて」書かれたコピーは、往々にして「誰にも届かない」コピーになりがちです。

メッセージは「私たちはあなたのこんな課題を、こうやって解決できます」という宣言です。競合との違いや、自社の強みを踏まえて言葉にします。ターゲットとメッセージを先に決めておくことで、デザインや構成の判断が格段にスムーズになります。

デザインは、最後に考える

「デザインが最後」と聞くと、デザインを軽視しているように感じるかもしれません。でも逆です。デザインは、ここまでの過程で決まった「なぜ」「誰に」「何を」を、視覚的に体験させるための仕上げだからこそ、最後に持ってくるべきなのです。

目的が明確で、ターゲットが決まり、メッセージが整っていれば、デザイナーはそれを最大限に活かす表現を作れます。逆に、それらが曖昧なままだと、デザインは「好みの問題」になってしまい、方向性のない議論が続いてしまいます。

美しいデザインは目を引きます。でも、目を引いた先に「伝えるべきこと」が整っていなければ、印象に残りにくいのです。デザインとコンテンツが揃ったとき、Webサイトは本当の力を発揮します。正しい順番で進めることが、リニューアルを成功に近づける最大の近道です。

まとめ

Webリニューアルは「なぜやるか」という目的の明確化から始め、現状把握→ターゲット・メッセージの策定→デザインという順番で進めることが大切です。目的が曖昧なまま進めると、判断に迷う場面が増え、完成後も課題が残りやすくなります。現状のデータと利用体験を把握することで、「変えるべき点」と「残すべき点」の判断が明確になります。デザインは最後に考えるものであり、それまでの問いへの答えを視覚的に体現する作業です。正しい順序で進めることが、リニューアルの成果を引き出すための第一歩になります。

記事監修

中谷 浩和

中谷 浩和

株式会社サンアンドムーン|代表取締役

1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。

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