このシリーズでは、Webサイトを継続的に改善していくための設計思想をお届けしています。Vol.5では、データや数値を「単なる記録」として眺めるのではなく、ユーザーの意図や感情を読み取る「聴く技術」として活用する方法を一緒に考えていきます。
あなたのWebサイトは、毎日何かを訴えているかもしれません。「このページ、わかりにくい」「ここまで来たけど、もう帰る」「このフォーム、面倒で途中でやめた」——言葉にはなっていませんが、アクセスデータの中に、ユーザーのそんな声がひっそりと刻まれています。それを読み取れるかどうかが、改善の質を大きく分けるのではないでしょうか。UXデザインの出発点を、サンアンドムーンは「サイトが語るデータを、ユーザーの声として翻訳すること」に置いています。
ページコンテンツ
数字の「意味」を読む、という視点
「直帰率70%」という数字があったとします。これは良いのでしょうか、悪いのでしょうか。実は、この数字だけでは何もわからないのです。ブログ記事なら直帰率が高くても自然ですし、問い合わせページで70%の直帰率なら、少し気になるサインかもしれません。
数字は「現象」を示してくれますが、その「意味」はページの目的や文脈と照らし合わせて初めてわかってきます。大切なのは「数字の良し悪し」ではなく、「この数字が示すユーザーの行動は、どんな状況を意味するのか」を考えることではないでしょうか。
たとえば滞在時間が30秒しかないページがあったとします。「コンテンツに興味がなかった」という解釈もできますが、「知りたいことが30秒で見つかった」という可能性もあります。ひとつの数字に、複数の仮説を持つこと——それが、データをユーザーの声として読む第一歩かもしれません。
「ヒートマップ」で見えてくる、ユーザーの正直な行動
数値データだけでは見えにくいユーザーの行動を視覚化してくれるツールが「ヒートマップ」です。ページのどの部分が多く見られたか、どこがクリックされたか、どの辺りでスクロールが止まったかを「熱の地図」として見せてくれます。
これを見ると、担当者が「ここが一番大切」と思って配置したコンテンツが、実はほとんど見られていなかった——ということが一目でわかることがあります。逆に、何気なく置いた画像やテキストに、予想外の視線が集まっていることも。
ヒートマップは、ユーザーの「本音の動線」をそっと教えてくれます。設計者の意図と実際の行動のズレを可視化することで、「次に何を変えてみようか」が自然と浮かび上がってくるのです。
問い合わせフォームの「離脱地点」を追う
特に中小企業のWebサイトで見落とされがちなのが、問い合わせフォームの分析です。多くの場合、「フォームがある」というだけで安心してしまいがちですが、実はフォームの途中で離脱しているユーザーが多い——というケースはとてもよく見られます。
入力項目が多すぎる、「必須」マークが少し怖い、エラーメッセージがわかりにくい、スマホで入力しにくい——こうした「小さな摩擦」が、問い合わせ直前のユーザーを逃がしてしまっているかもしれません。フォームの改善は、コンバージョン率に直結する、費用対効果の高い施策のひとつです。
フォームを「あって当然のもの」ではなく、「最後のおもてなし」として見直してみると、問い合わせ数が思いのほか変わることがあります。
「定性データ」という、数字にならない声
アクセス解析で得られる数値(定量データ)に加えて、見落とせないのが「定性データ」です。問い合わせメールの内容、電話での質問、SNSのコメント、スタッフがよく聞かれる質問——これらはすべて、ユーザーがサイトで解決できなかったことの手がかりかもしれません。
「お問い合わせ前に、サービスの料金が知りたかった」「どの担当者に連絡すればいいかわからなかった」——こうした声は、FAQ一つの追加やページ構成の小さな変更で解消できることが多いのです。定量と定性、両方の「声」に耳を傾けることで、Webサイトは驚くほど親切な存在に近づいていきます。
まとめ
サイトのデータは、ユーザーが言葉にできなかった「声なき声」の記録です。数字の意味はページの目的や文脈と照らし合わせて初めてわかり、ヒートマップはユーザーの本音の動線をそっと教えてくれます。問い合わせフォームの離脱地点を分析することは、最も惜しいユーザーを救う施策につながります。数値データと定性的な声の両方に耳を傾ける習慣を持つことが、ユーザーに本当に寄り添うWebサイトへの第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。






























