数値で測る“心の動き”──感性工学が拓く体験設計の未来

感性工学とは何か?

感性工学(Affective Engineering/Kansei Engineering)は、「人の感性(好ましさ、美しさ、心地よさなど)を工学的に扱う」学際的分野です。1970年代、日本の工業デザイン研究から始まり、現在では製品開発、建築、サービスデザインなどにも応用されています。 「使いやすい」だけでなく、「好き」「心地いい」などの感情面をデザインに取り込むことが目的とされています。

なぜ今、感性工学が注目されているのか?

単なるUIの見た目や機能性を超えて、「そのUIがなぜ心地よく感じるのか」「なぜ信頼できると感じるのか」といった感情要素の重要性が高まっています。 D2Cブランドやスタートアップにおける「共感されるデザイン」は、まさに感性をベースにしたUX戦略です。 人間中心設計(HCD)やユーザー心理と合わせて、デザインの差別化要素として感性の研究が注目されています。

感性工学がUI/UX設計にもたらすメリット

配色・フォント・アニメーションなどの“微細な違い”がユーザーの印象や感情に与える影響を数値化・可視化できます。
たとえば「高級感を感じるボタン配置」や「安心感を与える配色」など、主観的になりがちな判断に一定の論理と再現性を持たせることが可能です。 ユーザビリティテストだけでは測れない「感性評価」を取り入れることで、UI改善の精度が向上します。

感性評価をどう実装に活かすか?

顧客インタビューやペルソナ分析の中で、感情語(例:柔らかい、安心、シャープ、先進的など)を抽出します。 感性評価指標(Semantic Differential法やSD法など)を使ってUIのデザイン方向を可視化することが可能です。 さらに、機械学習による画像評価、アイトラッキング、視線マップなども併用することで、より定量的な分析も実現できます。

感性工学×UXデザインの実践事例

感性工学は、WebサイトやデジタルサービスのUI/UX改善において、定性的な「印象」を定量的に扱うための有効なアプローチです。
以下に、サンアンドムーンが関わったプロジェクトを例に、その実践をご紹介します。

医療法人の病院ポータルサイト

高齢の患者様やご家族が主なユーザーとなる病院ポータルサイトでは、「清潔感」「安心感」「信頼性」をキーワードにUIデザインを設計。 白を基調にした色彩設計と、アイコンや写真による視覚的ナビゲーションを取り入れることで、不安を感じさせない導線設計を実現しました。 また、医療情報へのアクセスストレスを軽減する情報設計も、感性工学の観点から構築しています。

教育機関向けの採用サイト

「誠実さ」「親しみやすさ」「自分らしく働ける環境」といった価値観を、色味や構成に落とし込みました。学生や保護者が安心して閲覧できるよう、柔らかいタイポグラフィと余白を活かしたレイアウト設計を実施。「言語にならない印象」を形にするプロセスは、まさに感性工学の応用といえます。

製造業メーカーのブランドページ

BtoB領域においても、製品の機能説明だけでなく「先進的」「高性能」「堅牢」といったブランドイメージをビジュアルとして伝えることが重要です。プロダクト写真のディレクションや、色調設計(寒色・無彩色ベース)によって、感性と一致したUIを展開しました。

まとめ

「なんとなく良い」「信頼できそう」といった感覚は、感性工学によって再現性のあるデザインへと変換できます。
サンアンドムーンでは、ユーザーの無意識の感情まで丁寧に掬い取り、それをUI/UXに落とし込むデザイン支援を行っています。
機能性だけでは伝わらない価値を、感性という視点から設計してみませんか。

参考リンク