飲食店にとってのUI/UXとは?

飲食店にとってのUI/UXとは?

飲食店の体験は、料理のおいしさだけでは語れません。
初めて訪れるまでの情報収集、入店のしやすさ、注文のしやすさ、店内の居心地、そしてスムーズな退店まで──
そのすべての接点がユーザーの満足度に直結します。
こうした一連の体験を設計・改善していくのが「UI/UX設計」です。
「分かりやすい」「迷わない」「また来たくなる」と思ってもらえる設計は、店舗の集客力や売上に直結します。

ユーザー視点で見る、飲食店のタッチポイント

1. 来店前:情報探索と意思決定

ユーザーは来店前に「どんな店か」を調べています。
Googleマップの評価、SNSの写真、予約サイト、公式HPなど複数の媒体で検索し、価格帯や混雑状況、メニュー構成を確認して比較検討します。
その際、表示速度が遅かったり、メニューが見づらかったりすると、ユーザーはすぐに離脱してしまいます。
「どこにあるのか」「今開いているのか」「予約は必要か」など、最初に抱く疑問に素早く答える情報設計が求められます。

2. 来店時:店舗でのUIと導線

店舗の外観や導線、セルフオーダー端末の操作性もUIの一部です。
「どこで注文すればいいのか分からない」「券売機が複雑で使いづらい」「並び方が分からない」──
こうした問題は、ユーザーのストレスと直結し、体験を大きく損ねてしまいます。
UI改善によって、初来店の不安を軽減し、リピートのきっかけをつくることができます。
特にファミリー層や高齢者など、インターフェースに不慣れな層にとっては、ちょっとした設計ミスが大きな障壁となり得ます。

3. 食事中・退店時:快適さと離脱のしやすさ

注文後の状況が分からず不安になったり、退店時にレジで待たされたりすることも、UXの低下につながります。
「ユーザーが自分のペースで過ごせるようにする」ことが、体験設計のカギです。
また、食事後の回遊導線──たとえば、ECサイトへの誘導やLINE連携、レビュー依頼なども含めて、UXの“出口設計”が求められます。

よくある“つまづきポイント”とその改善

・券売機が複雑で選びづらい

文字が小さく、カテゴリが深すぎて人気メニューが埋もれてしまうケース。
色彩や余白、メニュー分類、初期表示など、UIの工夫だけで「選びやすさ」は大きく変わります。
特に重要なのは、“選ばせたいメニュー”に自然と視線が集まるデザイン。
視線誘導の原則(ゲシュタルト法則など)を踏まえた設計が必要です。

・Webサイトや予約導線が分かりづらい

「予約ボタンが見つからない」「キャンセル方法が不明」「どこに営業時間があるか分からない」など、情報設計の問題がユーザー離脱に直結します。
構造の整理と明確なCTA配置が、UI改善の第一歩です。
また、予約確認やキャンセルがLINEやメールに連携されるかどうかなど、運用側の設計もUXに大きく影響します。

好事例に学ぶ:スターバックスのモバイルオーダー

「並ばない体験」がもたらす新しい来店価値

スターバックスの「モバイルオーダー&ペイ」は、アプリから注文・決済を完結し、店舗で商品を受け取るだけの仕組みです。
これにより、列に並ばず、スムーズに受け取れるUXが実現されました。
店内での“滞在”が目的ではない利用者にとって、この手軽さは非常に高い価値を持ちます。

UIとしての「余白」と「確実性」

注文ステップはシンプルで、店舗選択・メニュー選択・時間指定が直感的に行えます。
また、店舗ごとの混雑状況や準備時間も表示されており、「確実に受け取れる」という安心感がユーザーに好まれています。
「どこで」「いつ」「何を」受け取るかが一目で分かる画面設計は、UX設計の基本を押さえています。

UXがもたらす“心理的快適さ”

特に忙しい朝や昼休みなど、ユーザーにとって「自分のタイミングで受け取れる」体験は非常に価値があり、リピートの大きな要因となっています。
これは単なる利便性ではなく、“生活のリズムと調和するサービス”として評価されています。

バーガーキング:即決を促すUX設計

お得感とスピードを両立するアプリUI

バーガーキングのアプリは、クーポンの活用と直感的な操作性が特徴。
トップページからすぐに「お得なセット」や「期間限定メニュー」が選べ、金額もすぐに確認できます。
この「決断しやすさ」は、UXにおいて非常に重要な要素であり、ユーザーの行動を促す起点になります。

モバイルオーダーのスピーディな導線

店舗選択→注文→決済→来店チェックインというシンプルな構造。
注文完了後は通知が届き、アプリ内で進捗状況も確認できます。
「素早く・迷わず・お得に買える」体験設計が、忙しいユーザーの心理にマッチしています。
オーダーから受け取りまでのテンポ感が、アプリの利用価値そのものとなっています。

価値訴求の違いが生むUXの方向性

スタバは“安心と可視化”に重点を置いたUX。
バーガーキングは“即決と価格訴求”に特化したUI。
同じモバイルオーダーでも、ブランドの個性に応じて異なるUX戦略が採用されています。
それぞれの設計思想は、「誰に向けて、どのような行動を促したいか」という問いへの明確な回答とも言えます。

UI/UXは空間にも広がっている

店内導線や表示物も“UI”の一部

どこに並べばいいか、どこが空席か、どうやって呼び出すか。
こうした物理的な情報も、UIとして整理することで混雑や不安が減ります。
ピクトグラムや色分け、床の導線表示なども有効です。
情報を視覚的に「翻訳」して提供する仕組みがあれば、ユーザーのストレスは大幅に軽減されます。

“使いやすい空間”がリピートを生む

席の距離感、照明の明るさ、音楽のボリュームなど、空間UXも来店体験に大きく影響します。
アプリやWebだけでなく、実際の「場」そのものもUI/UX設計の対象です。
特にコロナ禍以降、非接触・セルフサービス型のオペレーションと空間の在り方が密接に結びつくようになり、“空間設計もまたUX”という認識が浸透しつつあります。

まとめ

飲食店におけるUI/UX設計は、デジタルとフィジカルのあらゆる接点に広がっています。
「並ばずに注文できる」「迷わずに席に着ける」「自分のペースで過ごせる」といった小さな快適さが、ユーザーの満足度を高め、リピートを促します。
スターバックスやバーガーキングのようなモバイルオーダー事例を参考に、自店舗に合ったUX改善を積み重ねていくことが、これからの飲食業において重要な差別化要素になるでしょう。
ユーザーが“また来たい”と思う飲食体験には、必ずその裏に緻密なUX設計があります。目に見えない気遣いこそが、最高のブランディングなのかもしれません。