“見えない”のに“見えてしまう”──デザインに効く3つのゲシュタルト原理

“見えない”のに“見えてしまう”──デザインに効く3つのゲシュタルト原理

以前の記事では、UI/UXデザインに活用できるゲシュタルト原理の中から「類似性」「近接性」「共通領域」の3つをご紹介しました。
これらは、要素の「まとまり」を視覚的に認識させるために非常に有効な原則でした。

今回はその続編として、視覚情報の“補完”や“流れ”、“安定性”に関わる3つの原理──「閉鎖性」「連続性」「対称性」──に注目します。
いずれも、ユーザーの無意識の認知を前提にしたデザイン設計において、大きな効果を発揮する心理的ルールです。

閉鎖性の原理:欠けていても「見えてしまう」力

閉鎖性(Closure)とは、図形やパターンの一部が欠けていても、脳が自動的に補って「全体」として認識しようとする現象です。
たとえば、ロゴやアイコンで一部が切れていても、「円だ」「顔だ」と認識できるのは、まさにこの原理が働いているからです。

UI/UXへの応用ポイント
・アイコンの簡略化:線やパーツが省略されていても、閉鎖性によって直感的に意味が伝わる。
・ホバー演出:ボタンの一部しか見えていなくても、ユーザーが“補完”して「押せそう」と感じる。
・ローディング表示:動きのある非完全な図形が「円」に見えることで、待機中であることが直感的に伝わる。

連続性の原理:視線は「流れ」に乗る

連続性(Continuity)は、人が視覚的に「なめらかなライン」を好み、分断されていない情報を1つの流れとして捉える傾向です。
たとえば、一直線に並んだアイコンや、グラデーションでつながる背景などは、視線を自然と誘導しやすくなります。

UI/UXへの応用ポイント
・導線設計:ユーザーの目線をナビゲーション→CTAボタン→お問い合わせまで誘導。
・視線誘導グリッド:リストやコンテンツの整列によって、スクロール方向の“流れ”が生まれる。
・スライダーやステップバー:情報が途切れずに続いている印象を与えることで、操作が直感的に。

対称性の原理:安定感と信頼を生むデザイン

対称性(Symmetry)とは、人が左右や上下でバランスの取れた構成を「美しい」「安定している」と感じる心理傾向です。
名刺やロゴ、建築物などに対称性が用いられるのは、無意識のうちに「整っている」「安心できる」と感じるからです。

UI/UXへの応用ポイント
・ファーストビューの設計:ヒーロービジュアルやキャッチコピーを中央配置することで、信頼感ある印象に。
・フォーム設計:対称性を保つことで、ユーザーが情報入力に集中しやすくなる。
・ブランドサイトのレイアウト:軸を揃えることで、企業の“ブレない姿勢”を視覚的に表現。

まとめ

ゲシュタルト原理は、ユーザーが「無意識にどう見ているか」を読み解く鍵となります。
今回ご紹介した「閉鎖性」「連続性」「対称性」は、派手な演出がなくても、視覚的な理解度や操作性を底上げする“静かな力”です。
UI/UX設計において、コンテンツの構造やナビゲーション設計を行う際には、こうした心理原則を味方につけることで、より快適で直感的な体験をつくることができます。