スキューモーフィズムとフラットデザイン。そして、リキッドグラスへ

時代が変えるデザイン:スキューモーフィズムからフラットデザイン、そしてその先へ

スキューモーフィズムとは?

スキューモーフィズム(Skeuomorphism)は、現実世界の素材や形状を模したデザイン手法です。たとえば、木目調の本棚、革張りのカレンダー、立体的なボタンなど、現実にある物をモチーフにしたUI表現を多く見かけました。

その代表的な例が、「ゴミ箱」アイコンです。不要なファイルをドラッグ&ドロップして入れるという動作自体が、現実の行動に近いため、初めてパソコンを触るユーザーでも直感的に理解できました。

ゴミ箱の消去演出に見る「リアルらしさ」

実際には、コンピューターの処理能力からいえば、ゴミ箱内のデータを削除するのは一瞬で済みます。しかし初期のUI設計では、あえて削除完了までの時間を数秒遅らせたり、破砕音やアニメーションを加えることで「本当に消えている」という心理的納得感を演出していました。これは、スキューモーフィズムが単なる見た目だけでなく、“動作のリアリティ”まで模倣していた好例といえます。

なぜスキューモーフィズムが重宝されたのか?

2000年代初頭、スマートフォンやパソコンが一般家庭に普及しはじめた頃、ユーザーの多くはデジタルに不慣れでした。そのため、Appleをはじめとした企業は、物理的なアナログ体験をそのまま模倣することで、操作へのハードルを下げようとしました。

たとえば、iOSの初期バージョンでは、革張りのカレンダーや木製の本棚、緑のフェルト地のメモ帳など、リアルな質感を活かしたUIが多く見られました。これらは、日常の延長線上でデジタル製品を使ってもらうための“橋渡し”でもありました。


フラットデザインへの転換とその背景

時が進むにつれ、こうしたスキューモーフィズムには限界が見えてきます。象徴的なのが、Appleの「CDアイコン」から「音符アイコン」への変更です。音楽アプリのアイコンにCDが使われていたのは、「音楽=CD」という共通認識があった時代。しかしストリーミング全盛の今、若年層にとってCDは“見たことのないモノ”となり、意味が通じなくなりました。

同様に、「受話器」や「フロッピーディスク」なども、世代交代によってその象徴性を失いつつあります。これが、AppleがiOS 7でスキューモーフィズムを廃止し、「フラットデザイン」へ大きく舵を切った背景です。

フラットデザインとユーザーの成熟

フラットデザインは、影や質感を排除し、色・アイコン・タイポグラフィだけで構成されるシンプルなスタイルです。ユーザーがデジタル操作に慣れたことで、「現実に似せる必要」がなくなり、逆に情報構造が整理されたシンプルなUIの方が求められるようになったのです。

また、デバイスの表示性能や処理速度が向上したことで、グラフィックリソースを軽量化し、アクセシビリティやパフォーマンスに配慮した設計も可能になりました。


リキッドグラス:質感と未来感の融合

リキッドグラスとは?

リキッドグラス(Liquid Glass)は、Appleが2025年のWWDCで発表した新たなソフトウェアデザイン言語です。透明性、光の屈折、流動的なアニメーションを特徴とし、iOS、macOS、watchOSなどのプラットフォーム全体で統一的に導入されました。

背景と技術的進化

Apple Siliconの進化により、リアルタイムでの光学表現が可能になりました。これにより、単なる装飾ではなく、情報の階層やコンテキストを視覚的に示すためのUIとしてリキッドグラスが登場しました。

特徴とユーザー体験

  • 背景の光を屈折・反射する半透明のUIレイヤー
  • コンテンツに応じて動的に変化するアニメーション
  • 物理的な素材感を取り入れつつ、操作性も維持
  • 新しいAPIとツール群による開発支援

Apple公式発表より引用

Appleは本デザイン言語について、「周囲の環境と連動し、情報の重なりや注目の優先度を自然に表現する」ことを目指していると述べています。また、XcodeやSwiftUIなどの開発ツールにも対応が進められ、エコシステム全体での普及が見込まれています。

まとめ

スキューモーフィズムは、視覚だけでなく行動や心理のレベルでも「現実の体験」に寄り添うことで、デジタルを日常に引き込む強力なデザイン手法でした。一方、時代が進み、現実の“象徴”が意味を失うと、フラットデザインのような機能優先の様式に移行しました。さらにその先には、現実感と抽象性を融合させたLiquid Glassのような新たな潮流も生まれています。

サンアンドムーンでは、こうした進化の背景や文化的文脈を踏まえ、UI/UXデザインにおける最適解を丁寧に設計・ご提案しています。

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