「一度に覚えられるのは4つまで」:記憶の限界から学ぶ、情報設計とUXのヒント

「一度に覚えられるのは4つまで」──記憶の限界は買い物リストでわかる

日々の生活の中で、「うっかり忘れてしまった…」という経験は誰しもあるもの。特に何かを“覚えておこう”とした瞬間に限って、すぐ忘れてしまう。実はこれ、人間の脳の構造にしっかりと理由があるのです。

そのカギを握るのが「ワーキングメモリ(短期記憶)」の容量。私たちが一時的に保持できる情報には限界があり、平均して4チャンク(情報のかたまり)までといわれています。これは「マジカルナンバー4」として知られ、UX設計や情報伝達にも大きな影響を与える考え方です。

買い物リストを頭の中だけで覚えてみると…

今夜の夕食にパスタを作ろうと決めたあなたは、スマートフォンを開かず、記憶だけを頼りにスーパーに向かいます。頭の中にある買い物リストは以下の6点:

  • パスタ
  • トマト缶
  • ニンニク
  • オリーブオイル
  • バジル
  • 粉チーズ

ところが、いざスーパーを出たあとで「あれ、バジル買ったっけ…?」と不安になったり、レシピを見返して「ニンニク忘れた!」と気づくことが多々あります。6つくらい覚えておけそうな気がしても、実際には3~4つ程度しか保持できていないのが現実です。

「マジカルナンバー4」とは?

この記憶の限界を説明するのが、認知心理学者ネルソン・コーワン(Nelson Cowan)が提唱した「マジカルナンバー4」です。かつては「7±2(5〜9個)」とされていましたが、それは情報を意味づけしてチャンクとして扱った場合に限られます。

コーワンの研究によれば、人間は文脈のない情報(例:ランダムな単語や数字)を保持する際、およそ4チャンクが限界であるとされました。つまり、脳は“なんでも覚えておける万能な箱”ではなく、限られた情報を一時的に置いておく小さな棚のような存在なのです。

チャンクの力で記憶は変わる

「チャンク(chunk)」とは、複数の情報を1つの意味あるかたまりとしてまとめたものです。たとえば「09012345678」という電話番号も、「090-1234-5678」と3つに区切ることで記憶しやすくなります。この“区切り=ハイフン”こそがチャンク化の実例です。

買い物リストも同様に、以下のようにチャンク化すれば、覚えやすさが格段に向上します:

  • 主食:パスタ
  • ソース材料:トマト缶、ニンニク、オリーブオイル
  • トッピング:バジル、粉チーズ

このように“6項目”であっても、意味でグルーピングすることで「3チャンク」に圧縮でき、脳の記憶容量に収まりやすくなるのです。

UX設計でも役立つ「記憶の前提」

この記憶の限界は、WebサイトやアプリのUI/UX設計でも大いに活用できます。

例えばフォームの入力項目が10個以上ある場合、ユーザーは途中で内容を見失い、離脱してしまう可能性があります。これを防ぐためには、次のような工夫が有効です:

  • 3〜4項目ごとにブロック化(ステップ分割)
  • カテゴリー分けで「記憶の負担」を減らす
  • 「今なにをしているか」が常にわかるインターフェース

つまり、UXの良し悪しには「人間の脳の限界を理解しているかどうか」が深く関係しているのです。

まとめ

私たちが一時的に覚えられる情報は、平均して4チャンクまで。買い物リストのような日常のシーンでも、チャンク化しない情報はすぐに記憶からこぼれ落ちてしまいます。Webサイトやサービス設計においても、「伝える量」ではなく「伝え方」にこそ工夫が求められます。認知の限界を前提とした設計こそが、ストレスのないユーザー体験をつくる第一歩です。