ページコンテンツ
私たちの行動は「予想」によって決まる
日々何気なく行っている「クリック」や「スワイプ」といった操作。私たちは、これらを直感的に行っているように思えますが、実はその背景には「こう動くだろう」「こうなるはず」という予測が存在しています。この“予測”は、過去の経験や学習を通じて形成されるものであり、デザインやインターフェースの使いやすさを大きく左右します。
この予測的な理解や行動を支えるのが「メンタルモデル(Mental Model)」です。UXデザインにおいては、ユーザーが持つこのメンタルモデルに寄り添う設計が求められます。予想外の動作をするUIや、慣れ親しんだ配置が崩れていると、ユーザーは混乱し、離脱の原因にもなります。
メンタルモデルとは?
メンタルモデルとは、人がある対象やシステムについて心の中で思い描いている「動作や構造の予想図」のようなものです。たとえば、「家のアイコンをクリックすればホーム画面に戻る」「検索は虫眼鏡のマークから始まる」といった認識は、すべてメンタルモデルによるものです。
このようなモデルは、ユーザーの知識、経験、文化的背景などによって形成されており、同じ操作でもユーザーごとに異なる解釈を持っている場合もあります。だからこそ、ユーザー調査やテストを通じて、ターゲットとなる利用者層がどのようなメンタルモデルを持っているかを理解することが重要です。
なぜ「右矢印」は「すすむ」と理解されるのか
多くのWebサイトやアプリでは、「→」のアイコンが「次へ」「すすむ」ボタンとして使われています。これは今や世界的に通用する視覚的言語(ビジュアルランゲージ)となっていますが、実はこれもメンタルモデルの一例です。
その起源の一つとしてよく挙げられるのが、1985年に任天堂が発売したファミコン用ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』です。このゲームでは、主人公マリオが常に“右方向”へ進むことでステージが進行していきました。この「右へ進む=前進」という体験が、当時の子どもたちの中に自然と刷り込まれ、やがては視覚的メタファーとして社会全体に浸透していったと言われています。
もちろん、文化圏によっては「右=未来」「左=過去」といった概念が異なる場合もありますが、日本や欧米圏では右方向を「前へ進む」と感じる傾向が強く、それが今のUI設計にも活かされているのです。
人は「変わること」より「予想通りであること」を選ぶ
こうしたメンタルモデルは、一度定着すると非常に強力です。その一例が「QWERTY配列のキーボード」に現れています。ご存知のとおり、アルファベット順ではなく、ややランダムに並んだこのキーボード配列は、もともとタイプライターの物理的な構造に起因しています。タイプバーが絡まらないよう、わざと打鍵スピードを抑えるために設計されたものでした。
現代においては、より効率的なキーボード配列(Dvorak配列など)も存在しますが、QWERTYが依然として主流であり続けているのは、人々がすでにこの配列に慣れ、変更による学習コストを避けているからです。これは、使いにくさよりも「予想通りに動くこと」の安心感が勝っている典型例といえます。
このように、人は必ずしも「最適解」を選ぶとは限りません。「慣れていること」「違和感がないこと」が、しばしば優先されるのです。
まとめ
人は常に「予測」しながら行動しています。だからこそUXやUIを設計する際には、ユーザーがどのようなメンタルモデルを持っているかを理解し、その予想を裏切らない導線や表現を設計することが求められます。革新性やデザイン性を追求するあまり、ユーザーの予想とズレが生まれてしまうと、かえって操作性は低下します。
ユーザーの「経験に基づいた予想」を尊重しながら、少しずつ新しい体験へと導いていくこと。それが、サンアンドムーンが目指す“人に寄り添うデザイン”の本質です。































