AIとクリエイティブの未来を共につくるパートナー募集

人は過去の経験と予想に基づいて行動する:メンタルモデルについて

今回のテーマは、メンタルモデルです。人は過去の経験から「こうなるはず」という予測を持って行動します。UXデザインにおいてこの予測を正しく理解し、それに寄り添う設計が求められる理由を見ていきます。

日々何気なく行っている「クリック」や「スワイプ」といった操作。私たちは、これらを直感的に行っているように思えますが、その背景には「こう動くだろう」「こうなるはず」という予測が存在しています。この予測的な理解や行動を支えるのが「メンタルモデル(Mental Model)」です。UXデザインにおいては、ユーザーが持つこのメンタルモデルに寄り添う設計が求められます。予想外の動作をするUIや、慣れ親しんだ配置が崩れていると、ユーザーは混乱し、離脱の原因にもなります。私たちサンアンドムーンがUXデザインの出発点を「ユーザーの経験に基づく予想」に置くのは、革新性を追求するあまり、ユーザーの予測とズレが生まれると、かえって操作性は低下してしまうと考えているからです。

メンタルモデルとは?

メンタルモデルとは、人がある対象やシステムについて心の中で思い描いている「動作や構造の予想図」のようなものです。たとえば、「家のアイコンをクリックすればホーム画面に戻る」「検索は虫眼鏡のマークから始まる」といった認識は、すべてメンタルモデルによるものです。このようなモデルは、ユーザーの知識、経験、文化的背景などによって形成されており、同じ操作でもユーザーごとに異なる解釈を持っている場合もあります。だからこそ、ユーザー調査やテストを通じて、ターゲットとなる利用者層がどのようなメンタルモデルを持っているかを理解することが重要です。

視覚的な記号もメンタルモデルの一例

多くのWebサイトやアプリでは、「→」のアイコンが「次へ」「進む」ボタンとして使われています。これは今や世界的に通用する視覚的言語(ビジュアルランゲージ)となっていますが、実はこれもメンタルモデルの一例です。「矢印を見ると進むと感じる」のは、過去にそうした体験を繰り返してきたからです。もちろん、文化圏によっては「左方向が進行」と捉えられる場合もあり、メンタルモデルが普遍的とは限りません。こうした視覚記号の意味づけも、対象ユーザーのコンテキストを踏まえて設計する必要があります。

人は「変わること」より「予想通りであること」を選ぶ

こうしたメンタルモデルは、一度定着すると非常に強力です。その一例が「QWERTYキーボード」に現れています。アルファベット順ではなく、やや不規則に並んだこの配列は、もともとタイプライターの物理的な構造に起因しています。現代においては、より効率的なキーボード配列も存在しますが、QWERTYが依然として主流であり続けているのは、人々がすでにこの配列に慣れ、変更による学習コストを避けているからです。これは、使いにくさよりも「予想通りに動くことの安心感」が勝っている典型例といえます。このように、人は必ずしも「最適解」を選ぶとは限りません。「慣れていること」「違和感がないこと」が、しばしば優先されるのです。

まとめ

人は常に「予測」しながら行動しています。だからこそUXやUIを設計する際には、ユーザーがどのようなメンタルモデルを持っているかを理解し、その予想を裏切らない導線や表現を設計することが求められます。革新性やデザイン性を追求するあまり、ユーザーの予想とズレが生まれてしまうと、かえって操作性は低下します。ユーザーの「経験に基づいた予想」を尊重しながら、少しずつ新しい体験へと導いていくこと。それが、サンアンドムーンが目指す人に寄り添うデザインの本質であり、使われ続けるUI/UXへの第一歩になります。

記事監修

中谷 浩和

中谷 浩和

株式会社サンアンドムーン|代表取締役

1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。

サンアンドムーンへのご相談はこちら

直感で選ばれるデザインへ。心理学に基づいたUI設計を。

無料でUX診断を依頼する