人の顔は、人物の識別だけでなく、表情、年齢、視線の方向など多くの社会的情報を短時間で伝えます。そのため顔は画面上で注意を集めやすく、人物の視線は見る人の注意の向きにも影響します。ただし、顔写真を置くだけで信頼やコンバージョンが上がるとは限りません。UIでは、顔を「注目させたい場所」と「伝えたい内容」に結び付けて使うことが大切です。
この記事の要点
- 顔の知覚には、紡錘状回を含む複数の脳領域が関わる
- 新生児も顔らしい配置へ反応するが、その理由は現在も研究中
- 人物の視線方向は、見る人の注意を同じ方向へ向ける手がかりになる
- 顔写真は目的、真正性、プライバシー、アクセシビリティを確認して使う
脳は顔をどのように認識するのか
Kanwisherら(1997)はfMRIを使い、15人中12人で、物体より顔を見たときに紡錘状回の一部が強く活動することを確認しました。この領域は紡錘状顔領域(Fusiform Face Area:FFA)と呼ばれます。現在は、FFAだけが単独で顔を処理するのではなく、後頭部や側頭部の複数領域からなるネットワークが、顔の検出、人物の識別、表情や視線の読み取りを分担すると考えられています。
顔を認識するとき、人は目、鼻、口を別々に数えるだけではありません。パーツの位置関係をまとまりとして捉えます。写真を上下逆さまにすると人物を見分けにくくなる「顔倒立効果」は、この全体的な処理の特徴を示す例です。
赤ちゃんは生まれつき顔を好むのか
生後1〜4日の新生児が、顔らしい配置の図形に強く反応した研究があります。ただし、これをそのまま「完成した顔認識能力が生まれつき備わる」と断定はできません。上側に要素が多い図形への反応、目への注意、出生直後の学習など複数の説明があり、顔への選好がどう生まれるかは研究が続いています。
UIの実務で押さえるべき点は、「顔なら必ず効く」ではなく、顔が利用者にとって意味の強い視覚刺激だということです。大きな人物写真は、意図したCTAより先に見られる可能性があります。どこへ注意を向けたいのかを決めてから配置します。
人物の視線で注意の方向が変わる
人は相手の目から、どこを見ているかを読み取ります。Risticら(2002)の実験では、課題の正解を予測しない視線手がかりでも、成人と就学前児の注意が視線方向へ移りました。矢印でも似た効果が起きたため、視線だけに固有の現象とは言い切れませんが、人物写真の向きが画面上の注意に影響する根拠になります。
たとえば、人物が画面外を見ているヒーロー画像では、視線がコンテンツから外へ流れるかもしれません。人物が見出しやCTAの方向を見ていれば、その先へ注意を渡しやすくなります。ただし、視線だけに頼らず、見出しの強さ、余白、ボタンラベルでも優先順位を示します。
顔写真をUIで使う4つの具体例
代表メッセージ
会社名と理念だけでなく、本人の写真、氏名、役職、実際の言葉を組み合わせると、誰が責任を持って発信しているか分かります。ストックフォトを代表者のように見せると、気づかれたときに信頼を損ないます。
スタッフ紹介と問い合わせ
相談前の不安を減らしたいページでは、担当者の顔と「何を相談できるか」を並べます。顔写真だけを置くより、専門領域、対応範囲、連絡後の流れを具体的に示すほうが判断材料になります。
利用者の声
本人の許可を得た顔写真は、事例の具体性を高めます。ただし写真の有無で内容の真偽を決めつけるべきではありません。社名、課題、実施内容、結果など検証できる情報を添えます。匿名が必要な利用者に、顔出しを求めない配慮も欠かせません。
オンボーディングとサポート
案内役の表情は、歓迎、注意、完了などの雰囲気を伝えられます。一方、エラー画面で笑顔を大きく出すと、困っている利用者の感情と合わないことがあります。状況に合う表情を選び、解決方法の文章を主役にします。
顔を使うときの確認ポイント
- 顔が本文や主要ボタンより強く目立ちすぎていないか
- 人物の視線が、見せたい情報の方向と合っているか
- 実在人物の写真について、掲載目的と期間の同意を得ているか
- 画像が表示されなくても、氏名・役職・内容を理解できるか
- 顔写真を使わない人や文化的背景の違いにも配慮しているか
顔写真の効果は、ページの目的や利用者によって変わります。ヒートマップだけで「見られた」と判断せず、CTAのクリック、フォーム到達、理解度、印象評価など目的に合う指標で比較します。
参考文献
この記事の作成に参照した資料
まとめ
顔は、人物や感情、視線をすばやく読み取るための強い手がかりです。UIではその強さを利用して、発信者を明らかにしたり、重要な情報へ注意を渡したりできます。顔を置くこと自体を目的にせず、「誰を見せるのか」「どこへ注意を導くのか」「利用者の判断に何が増えるのか」を決めて使うと、内容と視覚が一致した設計になります。
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執筆・監修

株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。

































