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なぜ私たちは“顔”に惹かれるのか──脳に備わった顔認識のしくみ
私たちは、日常の中で「顔」を瞬時に見分け、相手の感情や視線、意図を読み取っています。このような高度な処理は、実は脳の特定の領域が専門的に担っているからこそ実現しています。
顔認識に特化した脳の領域「FFA」
脳には「紡錘状顔領域(Fusiform Face Area:FFA)」と呼ばれる、顔の認識に特化した領域があります。この領域は後頭葉と側頭葉の間に位置し、特に人間の顔に対して強く反応します。MRIの実験では、人の顔を見たときにこのFFAが活発に活動することが確認されています。
人は生まれつき「顔」が好き
生後まもない新生児ですら、点を2つ並べて配置した「顔のような形」に自然と視線を向けることが知られています。これは、人間が本能的に顔を好み、顔を通して情報を得ようとする傾向が、生得的に備わっていることを示しています。
「顔の視線」を読む能力
顔を見るとき、私たちは単に形を捉えるだけでなく、「この人がどこを見ているのか」まで読み取っています。これは「共同注意(Joint Attention)」と呼ばれる能力で、他者の視線が向く先に自分の注意も向けるというもの。乳幼児期からこの能力が発達し、他者の関心を共有する土台となっています。
顔の認識は極めて素早い
顔の認識には、他の物体よりもはるかに速い時間で処理が行われます。たった200ミリ秒以内に、相手が誰なのか、表情はどうか、視線はどこを向いているのか、といった情報を処理します。この“顔特化”の高速処理能力は、人間社会でのコミュニケーションを円滑にするために進化したと考えられています。
顔の認識とUI/UXデザインの関係
顔の認知特性を利用した視線誘導
脳が顔に強く反応するという特性は、UI/UXデザインにおいても活用されています。たとえば、サイトやアプリ内で「人の顔」を用いたデザイン要素は、ユーザーの注意を集めやすく、感情的なつながりを生みやすいのです。
- 人物写真を使ったCTA(Call to Action):顔写真があるだけで、ボタンやリンクへの注目度が大きく向上します。
- ユーザーが“目で追う”視線を誘導:人の顔が「視線を向けている方向」に、ユーザーの目線も引き寄せられます。
- 信頼感や共感の醸成:無機質なアイコンやイラストよりも、実在する人物の表情がある方が、安心感が高まるという心理効果もあります。
ユーザー行動と視線誘導──“どこを見るか”は設計できる
視線マップが示す「Z型」「F型」パターン
ユーザーが画面上をどう見ているかを可視化した「ヒートマップ」は、視線誘導を考えるうえで有力なツールです。多くのWebユーザーは以下のようなパターンで情報を追う傾向があります。
- Z型:主にLPやシンプルな構成のWebサイトで見られます。
- F型:ニュースサイトや情報密度の高いページでよく見られ、左寄りの情報に注目しやすくなります。
ファーストビューの設計が“期待感”を左右する
人はページを開いて0.05秒以内に“印象”を形成し、1秒以内に「見るべきか/離れるか」を判断すると言われています。この短時間で視線を惹きつけ、必要な情報を提示できるかどうかが、UI/UXデザインの成否を大きく左右します。
- 視線の着地点に「人の顔」や「キャッチコピー」など、注目されやすい要素を配置する
- 顔の視線を活用し、ユーザーの視線を次のアクションへ自然に誘導する
- 階層的な情報設計を意識し、重要な要素ほど上部または中央に配置する
視線の“証拠”を可視化する──Microsoft Clarityの活用
ユーザーの視線誘導やクリック動線をより精緻に把握するために、Microsoft Clarityの導入をおすすめしています。
Clarityは、Microsoftが無償で提供しているアクセス解析ツールで、以下のような機能を備えています:
- ヒートマップ:どこが注目され、どこが無視されているのかをページ単位で可視化
- スクロールヒートマップ:どこまで読まれているかを確認し、離脱ポイントを分析
- セッションレコーディング:実際のユーザー行動を録画で確認可能
これらの機能を活用することで、感覚に頼らない「視線設計」が可能になります。ファーストビューの改善やCTAの配置見直しなど、UX最適化の意思決定にも役立ちます。
サンアンドムーンでは、こうしたヒートマップツールを活用したUI/UX分析・改善支援も行っています。導入や設定に関するサポートもご相談ください。
まとめ
人間は生まれつき「顔」に注意を向け、視線や感情を素早く読み取る能力を持っています。こうした特性は、脳内の顔認識専門領域「FFA」によって支えられており、私たちの社会的なつながりや直感的な理解を支える基盤となっています。
この顔認知の仕組みは、UI/UXデザインにも応用可能です。人物写真や視線誘導、ヒートマップ分析といった手法を活用することで、ユーザーの注目や行動を自然に導くことができます。特にファーストビューの設計やCTAの配置には、こうした視覚心理の理解が不可欠です。
サンアンドムーンでは、こうした脳科学や心理学の知見をデザインに応用し、ユーザーにとって“わかりやすく、信頼できる”体験設計を支援しています。






























