Vol.1|Webサイトは完成した瞬間から古くなる

このシリーズでは、「Webサイトを作って終わり」という考え方から少しずつ抜け出し、継続的な改善を前提にした設計思想をお届けします。全6回を通じて、Webサイトを”育てる”ことの意味と具体的なアプローチをわかりやすく解説していきます。改善が成果につながる仕組みを、一緒に考えていきませんか。

新しいWebサイトが完成した日、担当者さんはきっとホッとひと息ついたのではないでしょうか。「ようやく公開できた」という達成感は、本物だと思います。ただ、その翌日からユーザーの行動は変わり、競合はコンテンツを更新し、検索エンジンのアルゴリズムも静かに変化し続けています。完成した瞬間から、サイトは少しずつ「過去のもの」へと向かいはじめるかもしれません。UXデザインの出発点を、私たちサンアンドムーンは「公開後」に置いています。

完成は「ゴール」ではなく「仮説の提出」

Webサイトを作るとき、多くの企業は「誰に何を伝えるか」「どんなデザインが届くか」「どのページに誘導すべきか」を一生懸命考えます。それ自体はとても大切なことです。ただ、その答えはあくまで「仮説」にすぎないかもしれません。
たとえば、問い合わせボタンを目立つ場所に置いたとします。「きっとここが一番クリックされるはず」という、設計上の仮説ですよね。でも実際に公開してみると、そのボタンはほとんど押されず、ユーザーはまったく別の場所をクリックしていた——そんなことが、Webの世界では珍しくないのです。
Webサイトの完成は、長い対話の「はじめの一手」ではないでしょうか。サイトを世に出すことで初めて、本物のユーザーの行動データが手に入ります。その情報こそが、次の改善への地図になっていくのです。

古くなるのはデザインだけじゃない

「デザインが古くなるのはわかる。でも、作ったばかりのサイトが古い?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。実は、変化するのは見た目だけではないのです。
業界の状況は変わります。お客様が抱える悩みも変わります。競合他社がどんどん新しい情報を発信すれば、相対的に自社サイトの情報は「古い」と受け取られてしまうこともあります。また、スマートフォンの普及やGoogle検索の仕組みの変化によって、「かつては正解だった設計」が少しずつ足かせになることもあるでしょう。
Webサイトを生き物のようにとらえてみるのはどうでしょうか。定期的に栄養を与え、環境の変化に合わせて成長させていく——そういう視点がないと、サイトはどんどん「情報発信の置き物」になってしまいがちです。

「完成後」を前提にした設計とは何か

では、最初からどんな設計をすればよいのでしょうか。サンアンドムーンが大切にしているのは、「後で改善しやすい構造をつくる」という発想です。
たとえば、コンテンツの追加や変更が誰でも簡単にできるCMSの選定、アクセス解析ツールの初期設定、問い合わせや購入などのゴール到達を計測できる仕組みの整備——これらは、サイト公開「後」に活きてくる設計です。きれいなデザインももちろん大切ですが、改善の仕組みが整っているサイトのほうが、長期的には成果を出しやすいかもしれません。
改善前提の設計思想は、「完成を目標にしない」という意識から始まります。それが、長く成果を出すWebサイトへの第一歩ではないでしょうか。

アクセス解析は「採点表」ではなく「会話の記録」

「Google Analyticsは入れています。でも正直、あまり見ていなくて……」という声をよく耳にします。その気持ち、とてもよくわかります。数字の羅列を見ても、どこから手をつければいいのか途方に暮れてしまうのは、自然なことだと思います。
ただ、アクセス解析データは、ユーザーがサイト上で残してくれた「声なき声」の記録でもあります。どのページでたくさん時間を使ったか、どこで離脱したか、どんな検索ワードで来訪したか——これらはすべて、ユーザーの行動から生まれた「本音」かもしれません。
アクセス解析を「採点表」と捉えると、低い数字が怖くなりますよね。でも「ユーザーとの会話の記録」として読んでみると、改善のヒントを探す、少し楽しい調査になるかもしれません。データを読み解く視点さえ持てれば、Webサイトは自ら語りかけてくれる存在になっていくのです。

まとめ

Webサイトは公開した瞬間から、少しずつ「過去のもの」になりはじめます。完成は終わりではなく、「仮説の提出」にすぎないかもしれません。古くなるのは見た目だけでなく、情報の鮮度や設計の妥当性も、時間とともに変化していきます。改善しやすい構造を最初から意識し、アクセス解析を「ユーザーとの会話」として読み解く習慣を持つことが、長く成果を出すサイトへの基盤になります。「完成をゴールにしない」という設計思想を持つことが、Webサイト運用の出発点への第一歩になります。

記事監修

中谷 浩和

中谷 浩和

株式会社サンアンドムーン|代表取締役

1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。

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