ページコンテンツ
前回のおさらい:中心視野と周辺視野
前回の記事では、中心視野(文字や対象を詳細に識別)と周辺視野(ざっくりと構造や印象を把握)の違いを解説しました。今回は「周辺視野がユーザー行動にどう影響するか」をさらに深掘りし、その応用設計に焦点を当てます。
「見えている」と「導かれている」は論理より無意識
ユーザーがWebサイトを操作するとき、「どこに何があるか」を一つひとつ意識的に探しているわけではありません。むしろ大半の行動は、これまでの経験や慣習に基づいた“直感”によって決まります。
たとえば「右上にある三本線(ハンバーガーメニュー)」を見て、ほとんどのユーザーはそれがメニューだと認識します。これはラベルを読んで理解したのではなく、形状・配置・余白・周囲とのコントラストといった視覚要素が、過去の知覚パターンと結びついた結果です。
この“理解した気になる”状態は、周辺視野が働いている典型例です。つまり「見えている」だけでなく、「導かれている」──それも無意識のうちに、ということです。
さらに重要なのは、こうした無意識の誘導が“迷わせないUX”を生み出すという点です。わかりやすさを言葉で説明しなくても、「なんとなくここを押せば良さそう」「ここが次のステップに見える」とユーザーが感じられる状態を設計することで、行動は自然に促されます。
UI設計においては、「論理的に伝わるか?」以上に、「視覚的に感じ取れるか?」が問われるのです。周辺視野に適した視覚構成を考えることは、ユーザーを“意図通りに導く”ための鍵となります。
周辺視野×視覚的誘導:気づきの流れをデザインする
「これを押せばいいかな…?」とユーザーが無意識に認識する前段階が存在します。UXではこれを ビジュアル・キュー(visual cues) と呼び、周辺視野を通じて行動を導くヒントになります。
- 広い余白やマージンでエリアの境界感を感じさせる
- 視野の端にチラ見せする配色ブロックによる注目誘導
- スクロール時のフェード・アニメーションで動きを目立たせる
- アイコンや角丸シェイプが「押せそう」な印象を与える
視覚設計ルール:構造・階層・流れを意識する
以下は周辺視野を活かした設計手法です:
| 設計手法 | 周辺視野への効果 |
|---|---|
| 配色ゾーンの明確化 | セクションの構造を瞬時に把握 |
| 視線誘導アニメーション | 次の行動への気づきを自然に促進 |
| 角丸・影・テクスチャ等の立体表現 | クリックしやすさを無意識に印象づける |
| 余白と密度の対比 | 優先度や関係性を視覚で示す |
構成の流れが視線導線をつくる
Smashing Magazine によると、「視線の流れ(compositional flow)」は、ユーザーが初めてページを見たときにどこを見て、次にどう動くかを誘導するデザイン構成であり、Zパターンや Fパターンをフレームにしつつ、画像や色・形で調整できます。
階層と重さ:目を引く“ビジュアルウェイト”の操縦
要素には「視覚的重さ(visual weight)」と「方向(visual direction)」があり、より重い要素が注目され、その視線を他へ向ける力(視覚力線)につながります。これにより情報の優先順位や視線の進行順序(階層)を構築します。
階層のアクセシビリティ配慮
Nielsen Norman Group によれば、階層構造はスケール・余白・色・配置などの差異を通じて伝えるべきであり、過剰なバリエーションではなく、3~3段階程度の範囲で設計するのがベストプラクティスとされています。
ビジュアル誘導を支えるデザイン理論
- ゲシュタルトの原理
まとまり・近接・共通領域・継続性などによって無意識の認識を形成 - 感情設計の視点
色・形・質感などで「心地よさ」をつくり出し、行動を促進する手法
まとめ
周辺視野を活かした設計は、“読ませる”のではなく、“感じさせる”体験を生み出します。視覚的キューと誘導構成により、ページに入った瞬間からユーザーは“迷わず動き出す”感覚を得るのです。
サンアンドムーンは、この無意識の視覚設計を通じて、ユーザー行動を自然に導く「感じさせる UX」を提案します。視界のにじみから始まる導線設計、ぜひご相談ください。






























