前回は、言葉と構造がアクセシビリティを支える土台であることをお伝えしました。今回はその延長線上にある、もうひとつの大切なテーマ——アクセシビリティとSEOの深い関係について考えていきます。
「アクセシビリティの改善」と「SEO対策」。この二つは、別々のタスクとして語られることが多いかもしれません。しかし、よく見てみると、どちらも同じ問いに答えようとしていることに気づきます。「この情報を、正しく、確実に届けるにはどうすればいいか」。出発点こそ異なりますが、向かっている先はとても近いのです。私たちは、この共通する方向性にこそ、設計の大切な本質があると感じています。
ページコンテンツ
検索エンジンもまた、構造を「読んで」いる
検索エンジンは、Webページの内容を「読んで」理解しようとしています。しかし、人間のように画面を見て判断することはできません。検索エンジンが頼りにしているのは、HTMLの構造やテキストの内容、リンクの意味といった「言葉と構造」の情報です。
ここで思い出していただきたいのが、前回お話しした見出しの設計や代替テキストの設定です。読み上げソフトのユーザーが見出しをたどってページの全体像を把握するように、検索エンジンもまた、見出しの階層構造から「このページは何について書かれているのか」を読み取っています。
つまり、検索エンジンにとっても、読み上げソフトのユーザーにとっても、「ページの構造が論理的に整理されていること」が情報を理解するための前提になっているのです。アクセシビリティのために構造を整えることが、そのまま検索エンジンにとっても読みやすいページをつくることにつながる。この関係は、偶然ではなく、必然と言えるかもしれません。
「人に伝わるように設計する」と「検索エンジンに正しく読まれるように設計する」は、結局のところ同じことをしています。片方だけを意識するよりも、両方を同時に考えた方が、効率も成果もずっと上がるのです。
見出し設計が、人にも検索にも効く理由
見出しの設計は、アクセシビリティにおいてもSEOにおいても、最も基本的で、最も効果的な施策のひとつです。
検索エンジンはページの見出し構造を解析し、そのページの主題やセクションの関係性を理解しています。h1でページ全体のテーマを示し、h2で主要なトピックを分け、h3でさらに細かな論点を整理する。こうした階層が明確であるほど、検索エンジンはページの内容を正しく把握でき、適切な検索クエリに対して表示してくれるようになります。
同時に、この見出しの階層は、ページを訪れた方にとってもナビゲーションの役割を果たします。読み上げソフトのユーザーは見出し一覧でページを移動しますし、目で読んでいる方もまず見出しを流し読みして、興味のあるセクションを見つけます。見出しがしっかり設計されているページは、「どこに何が書いてあるか」が一目でわかるのです。
見出しを正しく設計することは、人のためであると同時に、検索エンジンのためでもある。ひとつの作業で二つの効果が得られる、とても効率的な改善ポイントです。
代替テキストは、画像検索のSEOでもある
前回、代替テキストを「画像の翻訳」としてお伝えしました。読み上げソフトのユーザーや、画像が表示されない環境にいる方のための大切な配慮です。しかし、代替テキストにはもうひとつの役割があります。それは、画像検索のSEOです。
検索エンジンは画像そのものを「見る」ことはできませんが、代替テキストを通じてその画像の内容を理解しています。つまり、アクセシビリティのために適切に設定された代替テキストは、そのまま画像検索で見つけてもらうための手がかりにもなるのです。
たとえば、施工事例の写真に「施工事例の写真」とだけ書くのではなく、「渋谷区のオフィスで実施したエントランスデザインのリニューアル事例」と記述する。こうした具体的な代替テキストは、読み上げソフトのユーザーにとっても、画像検索のユーザーにとっても、ずっとやさしく情報を届けてくれます。
代替テキストをひとつひとつ丁寧に書くのは、たしかに手間のかかる作業です。でも、その手間はアクセシビリティとSEOの両方に効く、とても価値のある投資です。
AI要約機能の時代に、構造化が意味を持つ
近年、検索エンジンにはAIによる要約機能が導入されるようになりました。検索結果のページに、関連するWebサイトの情報をAIがまとめて表示する仕組みです。ユーザーはリンクをクリックする前に、ある程度の情報を検索結果の画面上で得られるようになっています。
この変化は、Webサイトの構造化がこれまで以上に重要になることを意味しています。AI要約機能は、Webページの内容を読み取って要約を生成します。このとき、見出しが論理的に整理され、段落ごとの内容が明確で、情報の階層がはっきりしているページほど、正確に内容が要約されやすくなります。
逆に、構造が曖昧で、見出しと本文の関係がわかりにくいページは、要約の精度が下がったり、そもそも引用されにくかったりする可能性があります。つまり、アクセシビリティのために整えた構造が、AI要約機能にとっても「読み取りやすい」コンテンツになるのです。
これは読み上げソフトのユーザーにとっての読みやすさと、まったく同じ原理です。人にとってわかりやすいページは、AIにとってもわかりやすい。この関係は、技術がどれだけ進化しても変わらない、普遍的な原則なのかもしれません。構造化への投資は、今のSEOだけでなく、これからの検索環境にもやさしく効いてくる取り組みだと言えるでしょう。
ページ速度とモバイル対応という共通課題
アクセシビリティとSEOが重なるポイントは、構造や言葉だけではありません。ページの読み込み速度とモバイル対応も、両方にとって大切な共通課題です。
ページの読み込みが遅いサイトは、訪問者にストレスを与えます。特に通信環境が不安定なモバイル環境では、数秒の遅れがページの離脱に直結します。これはすべての訪問者にとっての不便ですが、読み上げソフトを使っている方や、古い端末を使っている方にとっては、さらに大きな障壁になりえます。
検索エンジンもまた、ページの速度を評価基準のひとつとしています。表示速度の遅いページは検索順位で不利になる傾向があり、モバイル端末での操作性が低いページも同様に評価が下がります。
画像の最適化、不要なスクリプトの削減、レスポンシブデザインの採用——こうした施策は、アクセシビリティの改善としてもSEO対策としても有効なものです。ひとつの施策で二つの課題に対応できるのですから、取り組まない理由はありません。
ページの速度を改善し、モバイルでの使い心地を高めること。それは、訪問者へのやさしさであると同時に、検索エンジンへの誠実さでもあるのです。
ユーザーと検索エンジン、両方に誠実であること
SEO対策と聞くと、テクニックを駆使して検索順位を上げるイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、持続的に評価されるWebサイトに共通しているのは、テクニックの巧みさではなく、情報の誠実さです。
訪問者が求めている情報を、わかりやすい構造で、適切な言葉で、アクセスしやすい形で提供すること。それは、アクセシビリティの観点から見ても、SEOの観点から見ても、正しいアプローチです。小手先のテクニックに頼るよりも、「来てくださった方が満足する情報を、きちんと届ける」という当たり前のことを丁寧に実践する方が、結果的に評価されます。
うれしいことに、訪問者に誠実に向き合ったサイトは、検索エンジンからも「誠実なサイト」として評価される傾向があります。それは、検索エンジンの評価基準が、突き詰めれば「訪問者にとって良い体験を提供しているか」に収束していくからです。
アクセシビリティとSEOを別々の課題として捉えるのではなく、「すべての方に情報を届ける」というひとつの目標として統合すること。その姿勢が、長く信頼されるWebサイトをつくるやさしい土台になります。
まとめ
Webアクセシビリティの改善とSEO対策は、異なる文脈で語られることが多いものの、実は同じ方向を向いています。見出し構造の整備、代替テキストの設定、わかりやすいナビゲーション、ページ速度の改善——人にやさしい設計は、検索エンジンにも正しく届きます。さらに、AIによる要約機能の普及により、構造化されたコンテンツの価値はこれまで以上に高まっています。この二つを別々の施策として進めるのではなく、「すべての方に情報を届ける設計」として統合的に取り組むことが、信頼されるWebサイトへの第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。






























