アニメーションの目的──UXにおける「動き」の正しい使い方

アニメーションは飾りじゃない──UXにおける「動き」の正しい使い方

UXデザインにおいてアニメーションを取り入れることは一般的になりましたが、実は“なんとなく動かす”だけでは逆効果になりかねません。ユーザーの理解を助けるどころか混乱させたり、操作性を損ねることもあります。

では、アニメーションはどのような目的で使うべきなのでしょうか?
Nielsen Norman Group(NNG)の提言をもとに、UXにおけるアニメーションの役割と、実践的な活用方法を解説します。

UXにおけるアニメーションの3つの目的

1. 注意を引く(Attract Attention)

アニメーションが持つ最大の特徴のひとつは、人の視線を自然と集める点です。たとえば通知バナーがスッとスライド表示されたり、入力エラーが揺れるように強調されたりすることで、ユーザーは「どこを見るべきか」を直感的に理解できます。

特にスマートフォンなどの小さな画面では、視覚的なヒントを最小の面積で伝えることが求められるため、「動き」は非常に有効な手段となります。

ただし、過剰なアニメーションは逆効果です。複数箇所で点滅が起きたり、ずっと動き続ける要素があると、ユーザーの集中力がそがれ、ストレスの原因になります。動かすべきなのは“本当に見てほしい場所”だけです。

2. 因果関係を示す(Show Cause and Effect)

ユーザーのアクションとその結果が視覚的に繋がるように設計することで、操作への納得感と安心感を生み出すことができます。

たとえば「アイテムをカートに入れる」操作で、商品がカートに吸い込まれるようなアニメーションがあると、「自分が何をしたか」が明確に視覚化されます。

このような“原因と結果”の演出は、特にeコマースや業務システムなど、誤操作が不安につながる場面でこそ効果を発揮します。

3. 意味を強調する(Enhance Signifiers)

アニメーションは、「これは押せる」「読み込み中です」「無効な状態です」などのUIの状態や機能を伝えるシグナルとしても機能します。

たとえば、ホバー時にボタンが浮き上がる動きは「これはクリック可能です」という視覚的メッセージになります。反応がないボタンには動きをつけず、操作不可であることを明示する──そんな細かな設計が、ユーザー体験をよりスムーズにします。

アニメーションのこの使い方は、静的デザインでは補えない“意味の補足”を可能にします。

「楽しい動き」と「意味ある動き」は別物

つい目を引く動きや派手な演出を加えたくなりますが、アニメーションの本来の目的は“楽しませる”ことではなく“伝えること”です。

動きを加えることでローディングが長引いたり、ユーザーが本来の目的にたどり着けなくなるのであれば、それはデザインとして失敗です。

たとえば、初回アクセス時にフルスクリーンのロゴアニメーションを表示したくなることがあります。しかし、それがユーザーにとって「何かを待たされている」体験になってしまえば、離脱を招くリスクが高まります。

UXを支えるモーションデザインの実践ポイント

実務においてアニメーションを正しく活用するためには、以下のような視点が重要です。

  • アニメーションは最小限に。ページあたり1〜2か所に限定する。
  • 「誰の」「どの行動」に対応した動きなのかを明確にする。
  • デザインカンプだけでなく、プロトタイプ段階で動きを確認する。
  • 動きのスピード、イージング(加速・減速)、タイミングを細かく調整する。
  • モーションによってユーザーの期待を裏切らないよう注意する。

アニメーションを適切に設計するには、UIデザイナーだけでなく、実装を担当するフロントエンドエンジニアとの連携も欠かせません。「どんな意図がある動きなのか」を共有することで、実装時のチューニングにも説得力が生まれます。

サンアンドムーンでの取り組み

サンアンドムーンでは、UI/UXデザインの設計において、アニメーションを単なる演出ではなく、「ユーザーの理解を助けるインターフェースの一部」として捉えています。

Webサイトや業務システムにおける細やかなモーションの設計・監修、プロトタイピングの段階での動きのレビューなどを通して、ユーザーの負担を減らし、操作体験を自然にするための工夫を重ねています。

過剰なアニメーションが招くリスクとは?

最後に、注意点として不適切なアニメーションが招くUX上のリスクも確認しておきましょう。

  • 操作の意図が読めず、混乱を与える
  • 動きが過剰で、視覚的ノイズになる
  • スマートフォンや低スペック端末でパフォーマンスが悪化する
  • 読み込み時間が長くなり、直帰率が上がる
  • 自動再生や強制アニメーションがユーザーの自由を奪う

こうしたリスクを避けるためにも、アニメーションは「ユーザーが主役である」ことを前提に設計すべきです。

まとめ

アニメーションは、ただの演出ではなく、ユーザーの視線を誘導し、因果関係を明示し、インターフェースの意味を強調するための「情報設計の一部」です。UXを向上させるためには、“なぜその動きが必要なのか”を設計段階で言語化し、チーム全体で共有しておくことが鍵となります。目的のない動きは削ぎ落とし、意図のある動きだけを丁寧に設計していく──それが、使いやすく信頼されるプロダクトへの第一歩です。

参考リンク