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“付箋”が導く、ユーザー理解の一歩──アフィニティ・ダイアグラムとは

今回のテーマは、ユーザー調査で集めた「声」を整理するための手法、アフィニティ・ダイアグラム(親和性ダイアグラム)です。付箋を使ってばらばらの情報をまとめていく、いたってシンプルなやり方をUX設計の視点から見つめ直していきます。

インタビューやアンケートを終えたあと、手元に残るのは大量のメモ。一つひとつは大事な声なのに、机に広げただけでは何が言いたいのか見えてこない。そんなもどかしさを覚えた経験はありませんか。バラバラの情報も、似たもの同士を寄せ集めると、不思議と「かたまり」が浮かび上がってきます。私たちサンアンドムーンがUXデザインの出発点をユーザー理解に置くのは、こうした地道な整理の先にこそ、本当のニーズが姿を見せると考えているからです。

付箋に書き出すと、見えなかったパターンが立ち現れる

アフィニティ・ダイアグラムは、調査で得られた発言や行動、感情といった情報を一枚ずつ付箋に書き出し、似た内容ごとにグループへ寄せていく手法です。やることはとてもシンプル。けれど効果は侮れません。断片のままでは気づけなかった共通の傾向が、並べ替えるだけで輪郭を帯びてくるのです。

進め方は、壁やホワイトボードに紙の付箋を貼るアナログな方法でも、画面上で付箋を動かせるオンラインのツールでも構いません。大切なのは道具の種類ではなく、色分けした付箋を自由に並べ替えられること。リモートで離れていても、同じ景色をチームで眺められる。それだけで認識のズレがぐっと小さくなります。

観察をメモに変える——短く、明確に

実際の作業では、観察した内容を一枚につきひとつ、付箋に書き出していきます。ここで効いてくるのが、限られたスペースに要点を端的に記す力です。あいまいな表現は避け、できるだけ「その人の声の核心」だけを切り取る。長い説明より、短い一言のほうが後で効いてきます。

さらに、参加者ごとに付箋の色を変えておくと、後の作業が一段とスムーズになります。誰がどんな意見を持っていたのか。どの層に偏りがあるのか。色という手がかりがあるだけで、声の分布が一目で読み取れるようになります。整理を始める前のひと工夫が、あとの発見の質を左右するのです。

グループ化が、課題の共通点を浮かび上がらせる

付箋が出そろったら、内容の近いもの同士を寄せていきます。たとえば「メニューの場所がわかりづらい」「ボタンの色を変えられない」「専門用語の意味がわからない」といった声。一見すると別々の不満ですが、並べてみると、いずれも「迷い」や「戸惑い」という同じ根っこから生まれていることが見えてきます。

同じような戸惑いが複数の参加者から繰り返し挙がっていたなら、それは偶然ではありません。多くの人がつまずく場所ほど、改善の優先度は高い。バラバラの声をまとめる作業は、どこに力を注ぐべきかを教えてくれる、いわば道しるべになります。

テーマを定義する——意味を与え、構造をつくる

グループができたら、それぞれのかたまりに「テーマ」という名前をつけます。「便利さ」「はじめの一歩」「言葉づかい」「戸惑い」——こうした見出しを与えることで、ただの付箋の集まりが、意味を持った地図へと変わっていきます。「確認画面がほしい」「繰り返し予約したい」といった声が集まれば、それは『安心感を求めている』というテーマとして読み解ける。設計の重要な手がかりになります。

そして忘れたくないのは、分類が終わってもそこがゴールではないということ。一度立てたテーマをあえて組み替えてみると、最初は見えなかった新しい視点が顔を出すことがあります。整理とは、答えを固定する作業ではなく、ユーザーの本音に近づいていく対話なのです。

まとめ

アフィニティ・ダイアグラムは、ユーザー調査で得た声を付箋に書き出し、共通点でグループ化し、テーマとして意味づけていく手法です。その過程を通して、一人ひとりの断片的な声の奥にある潜在的なニーズや課題が浮かび上がってきます。これは情報をただ片づけるための作業ではありません。つながりを見出し、意味を与えること自体が、デザインそのものなのです。プロジェクトの進む方向に迷ったときこそ、付箋を手に取り、ユーザーの声に耳を澄ましてみる。その地道な一歩が、本当に求められる体験を形にするための第一歩になります。

記事監修

中谷 浩和

中谷 浩和

株式会社サンアンドムーン|代表取締役

1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。

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