プロジェクトの最適化──リーンとシックスシグマの考え方とデザインとの関係

プロジェクトの無駄を減らすには?──リーンとシックスシグマの考え方とデザインとの関係

プロジェクトの進行が遅れる、品質にばらつきがある、リソースが枯渇する──。こうした悩みは、制作現場において常につきまとう課題です。業務の複雑化や属人化が進む現代において、私たちはどのようにすればより効率的に、かつ安定した成果を出せるのでしょうか。

そこで鍵となるのが、製造業で培われてきた「リーン」および「シックスシグマ」の考え方です。これらは単なる製造手法ではなく、あらゆる業種・業界のプロジェクトマネジメントやデザインワークにも応用可能な、普遍的な改善メソッドです。

この記事では、それぞれの原則とプロセス、そしてWeb制作やUI/UXデザインにどう活かせるかを掘り下げていきます。

リーンとは:本質的価値を残し、ムダを削ぎ落とす思考法

リーン(Lean)とは「痩せた・無駄がない」という意味の言葉で、元はトヨタ生産方式にルーツを持ちます。その基本理念は「価値を生まないすべてのムダを排除する」こと。これは製造ラインに限らず、クリエイティブな仕事やプロジェクト管理においても強力に機能します。

リーンでは、以下の8つの「ムダ」を特定し、それらの排除を徹底します:

  • 欠陥(不具合や修正による手戻り)
  • 過剰処理(必要以上の作業や情報)
  • 過剰生産(作りすぎ、準備しすぎ)
  • 待機(次の作業を待つ時間)
  • 在庫(溜まったタスクや未公開データ)
  • 輸送(過剰なファイルのやり取りや移動)
  • 動作(無駄なアプリ切り替えや操作)
  • 人材の不活用(メンバーの能力の不活用)

これらはWeb制作の現場にも頻繁に存在します。たとえば、過剰なチェックフローや意図の不明瞭な修正指示、冗長なUI要素などが「過剰処理」に該当し、未整理のFigmaやDrive内ファイルは「在庫」そのものです。

UI/UXデザインにおけるリーンの応用

デザインの工程にも、リーン思考は大いに活かせます。

・構成やワイヤーフレーム段階で「この要素は本当に必要か?」を問い直す
・ユーザーの行動から遠い情報を削除し、導線をスリム化する
・レビュー工程を視覚化し、認識齟齬による修正を未然に防ぐ

特にLP設計やアプリUIにおいては、情報量の最適化とレイアウトの明確化により「価値を伝えるデザイン」へと昇華できます。

5S:整理整頓を習慣化するデザインプロセス

リーンを日常業務に浸透させるための第一歩が「5S活動」です。これは以下の5つから成る実践法です。

  1. 整理(Seiri):不要なコンポーネントやラフ案を削除する
  2. 整頓(Seiton):使用頻度の高いUIパーツを使いやすい場所に配置
  3. 清掃(Seiso):定期的にデータや素材を見直し、不要物を除去
  4. 標準化(Seiketsu):スタイルガイドや命名規則で作業を統一
  5. しつけ(Shitsuke):上記ルールをチームで守り合う文化づくり

FigmaやXD、Notionなどのクラウドツールにおいても、5Sを意識することで、チームのパフォーマンスは大きく変わってきます。

かんばんボード:進行中の「見える化」

リーンにおいてもう一つ重要なのが「かんばん(看板)」です。これはタスクの流れを一目で把握できる可視化ツールで、現在ではTrelloやBacklog、Jiraなどが広く活用されています。

「To Do」「In Progress」「Review」「Done」などのステージにタスクを並べることで、チーム全体の負荷やボトルネックを把握できるようになります。デザイン業務においては、下記のような応用が可能です。

・ワイヤーフレーム案の検証・調整ステータス
・コンポーネントのレビュー・承認ステージの可視化
・バナーやイラストなど短期制作物の進行状況の追跡

これはまさに、リーンの「流れを止めない」思想を実現するための現代的なツールです。

シックスシグマとは:ばらつきを減らす品質マネジメント

シックスシグマは「高い精度で安定した品質を確保する」ための方法論で、製造業では誤差や不良品を極限まで抑えるために使用されてきました。

その考え方は次のようにUI/UXにも応用できます。

・問い合わせフォームのエラー発生率を測定し、改善
・読み込み速度や描画パフォーマンスの最適化
・ユーザー離脱率をページ単位で分析し、差異を特定

シックスシグマの7原則をデザインに適用すると、ユーザー体験の一貫性が高まり、結果的にCVRや満足度の向上につながります。

デザインへの具体的な応用:7つの原則の視点

シックスシグマには以下の7つの柱があります。

  • 顧客を中心に考える
  • 実際の仕事の進め方を深く理解する
  • プロセスの流れを最適化する
  • 無駄を減らして価値に集中する
  • ばらつきを減らして不具合を防ぐ
  • チームで協力しながら改善する
  • データに基づいた体系的な改善を行う

たとえば「プロトタイプ検証→ユーザビリティテスト→分析→改善」という一連のフローは、まさにこの原則をなぞるものです。定量的なフィードバックループの活用が、属人的な判断を減らし、チームの設計品質を底上げします。

リーンシックスシグマ:両者を統合したハイブリッド型改善手法

リーンとシックスシグマは、異なるアプローチを取りつつも、補完関係にあります。

・リーン:プロセスの流れを整え、ムダを排除する
・シックスシグマ:品質のばらつきを減らし、安定性を確保する

この2つを組み合わせた手法が「リーンシックスシグマ」と呼ばれ、現代のビジネスや開発、UX改善などに幅広く応用されています。

Web制作現場での実践例

以下のようなシーンで、両手法は有効に機能します。

・Figmaのアセットライブラリを5Sで整備し、かんばんで進捗を管理
・CVRやクリック率のばらつきをシックスシグマで分析し、ABテストを設計
・UIガイドラインやデザインシステムにおける「ばらつき防止」のルール化
・ナレッジベースや過去施策のログを用いた「学習→標準化→改善」の実施

両者をうまく取り入れることで、チーム全体のアウトプットが「早く・正確に・安定して」届けられるようになります。

まとめ

リーンとシックスシグマは、それぞれプロジェクトの「効率」と「品質」を高めるための強力な考え方です。UI/UXデザインやWeb制作の現場においても、タスク管理・情報整理・品質分析といった多くのフェーズに応用できます。
ムダを排除し、ばらつきを減らすことで、チームの生産性とユーザー体験の両面が向上します。とくに「5S」や「かんばんボード」などは、すぐにでも取り入れられる実践的なツールです。
制作フローの見直しや業務改善を考える際には、ぜひこの2つの視点を取り入れてみてください。