人間の視野をデザインに活かす:中心視野と周辺視野のUX的アプローチ

「見る」には中心と周辺がある

私たちは、日々何気なく「見ている」と感じていますが、その視覚体験は実は2つの視野で成り立っています。それが「中心視野」と「周辺視野」です。
中心視野は、ものの形や色、文字の読み取りなど、細かい情報の識別に特化した領域です。たとえばスマートフォンでSNSを読んだり、検索結果をタップしたりする際に、私たちはこの中心視野を使っています。

一方で、周辺視野は私たちの視界の“端っこ”をカバーする領域で、空間全体の動きや違和感、明るさの変化などに敏感です。実はこの周辺視野、単なる“おまけ”ではなく、人間の行動や感情に深く関わる、とても重要なセンサーなのです。

原始人の視覚に学ぶ:命を守るためのセンサー

この「周辺視野」のすごさは、太古の人類の生活からも読み取ることができます。たとえば狩猟生活を送っていた時代、私たちの祖先は中心視野でマンモスなどの獲物を追いながら、周辺視野では茂みの中にひそむ捕食者や、足元に飛び出してくる毒虫の存在を察知していました。

つまり周辺視野は、「異変を察知する」ための早期警戒装置のような役割を担っていたのです。この生存本能は現代にも受け継がれており、私たちは無意識のうちに、周辺視野から得たわずかな違和感に反応しています。

映像表現にも応用される「視野の心理」

こうした視野の特性は、映画やゲームといったエンターテインメントの世界でも広く活用されています。
たとえばホラー映画では、恐怖の対象であるゾンビや幽霊が画面のど真ん中に現れることはほとんどありません。むしろ、観客の視界の“端”にぼんやりと映り込ませたり、背後の奥行きに動きを持たせたりすることで、「なにか来そう…」という緊張感を高めています。

これは、周辺視野の持つ“気配を察知する力”を巧みに使った演出です。人は意識して見ていない部分から、感情を大きく揺さぶられる——この事実は、UXデザインにおいても見逃せないヒントになります。

UXデザインに活かす「視野の設計」

それでは、この「中心視野」と「周辺視野」の特性を、UXデザインにおいてどのように活かすことができるのでしょうか。ユーザーの視線の動きや、無意識の認知に寄り添う設計のポイントを以下にご紹介します。

重要な情報は中心視野へ
テキスト、CTA(Call to Action)ボタン、ナビゲーションなど、「確実に伝えたい情報」は視線が集中する中心に配置しましょう。スクロールの停止点や、視線が最初に向かう位置を意識することがポイントです。

周辺視野は“感情”に訴える
背景の動き、ふわっと現れるアニメーション、微細な色の変化などは、ユーザーの感情に間接的に働きかける仕掛けになります。違和感を与えるのではなく、“なんとなく心地いい”を演出するために周辺視野は活用されます。

注意喚起は画面端で目立たせる
緊急性の高い情報や通知などは、あえて視界の端に設けることでユーザーの「何かが違う」という反応を引き出し、注目を集めることができます。追従型バナーやトースト通知などはこの原理を活用しています。>

まとめ

UXデザインでは、ただ美しく整ったレイアウトを作るだけでは不十分です。人がどのように「見て」、どう「感じているか」に目を向けることが、より深いユーザー体験へとつながります。
中心視野と周辺視野、それぞれの役割を理解し、意図的に活かすことで、視覚的にも心理的にも“心に残るデザイン”が生まれるのです。

サンアンドムーンでは、“人がどう感じるか”を大切にしながら、見え方や気づき方まで丁寧に考えたデザインを心がけています。日々のちょっとした使いやすさが、ユーザーにとっての「心地よさ」につながると信じています。