『味方』になるデザイン:a11yが示すUXの未来

アクセシビリティの視点からUXを再考する:すべての人に届くデザインのために

多様な参加者を巻き込むUXリサーチの重要性

UXリサーチを進めるうえで欠かせないのが、多様な能力を持つ参加者を含めることです。特にデザインのフィードバックを得る段階では、「公平性」や「使いやすさ」の観点から、アクセシビリティに配慮した設計が求められます。
アクセシビリティとは、障害のある人にとって使いやすい製品・サービス・環境を整えることを意味します。UXデザイナーとして、すべての人にとって使いやすく、アクセシブルな体験を提供することは、避けて通れない責任です。

a11yとUXデザイナーの役割

アクセシビリティは、略して「a11y(エイ・イレブン・ワイ)」と表記されることがあります。これは “accessibility” の「a」と「y」の間にある11文字を省略したもので、「ally(味方)」とも発音が似ています。UXデザイナーは、あらゆるユーザーの「味方」として、誰もが平等にアクセスできる体験を設計する立場にあります。

アクセシビリティは、特定の人のためだけのものではない

製品を障害のある人に使いやすく設計することで、実は誰にとっても便利で快適な体験につながります。アクセシビリティを意識した設計は、より多くのユーザーに価値を届けるための方法であり、「限定された配慮」ではなく「全体最適」の考え方です。

3つの障害タイプを理解する

アクセシビリティの対象は、以下の3つの障害タイプを含みます。

  • 永続的な障害: 例:視力や聴力を失った状態。視覚障害を持つアミールは、杖を使って移動します。
  • 一時的な障害: 例:怪我や一時的な機能低下。眼鏡を忘れたマーゴは、視界がぼやけて不便を感じます。
  • 状況的な障害: 例:環境的に制約される場面。運転中のフアンは画面を見られず、音声コマンドで対応します。

支援技術(Assistive Technology)を知る

支援技術(Assistive Technology/AT)は、障害のある人が生活・学習・仕事をより良く行うためのツールです。UXリサーチでは、こうした支援技術のユーザーを積極的に調査に含めるべきです。

代表的な支援技術(AT)の例

  • スクリーンリーダー: テキストやボタン、コードなどを読み上げる。弱視のユーザーが使用。
  • スイッチ: 最小限の動きでデバイスを操作するためのボタン型デバイス。
  • クローズドキャプション/音声読み上げ: 聴覚に障害のあるユーザー向けの音声変換機能。
  • リマインダーアラーム: 認知障害のある人向けの、視覚・音による通知補助。
  • AAC(拡大・代替コミュニケーション)機器: 画像や記号で意思疎通を支援するツール。

試して理解する:支援技術を自ら体験する

ユーザビリティ調査を行う際は、まず自分たちの製品を支援技術でテストしてみることが有効です。たとえば、スクリーンリーダーを用いて、自社Webサイトやプロトタイプがどのように読み上げられるかを確認してみてください。
これにより、障害のあるユーザーの体験をより深く理解でき、改善点やより良い質問設計につなげることができます。

まとめ

アクセシビリティの設計は、特定のユーザーだけでなく、あらゆるユーザーにとっての快適さと公平性を実現するための土台です。UXデザイナーは、多様な参加者の声に耳を傾け、支援技術への理解を深めながら、すべての人に届くデザインを目指しましょう。