今回のテーマは、感性工学とUI/UX設計の関係です。「なんとなく良い」「心地いい」という感覚をデザインに再現性高く反映するための考え方を紹介していきます。
感性工学(Affective Engineering/Kansei Engineering)は、「人の感性(好ましさ、美しさ、心地よさなど)を工学的に扱う」学際的分野です。国内の工業デザイン研究から始まり、現在では製品開発・建築・サービスデザインなどにも応用されています。「使いやすい」だけでなく、「好き」「心地いい」などの感情面をデザインに取り込むことが目的です。私たちサンアンドムーンがUI/UX設計の出発点を「言語にならない印象を形にすること」に置くのは、ユーザーの無意識の感情まで掬い取る設計こそが、単なる機能性を超えた体験価値をつくると考えているからです。
なぜ今、感性工学が注目されているのか
単なるUIの見た目や機能性を超えて、「そのUIがなぜ心地よく感じるのか」「なぜ信頼できると感じるのか」といった感情要素の重要性が高まっています。共感されるブランドやプロダクトは、まさに感性をベースにしたUX戦略から生まれます。人間中心設計(HCD)やユーザー心理と合わせて、デザインの差別化要素として感性の研究が注目されているのです。
感性工学がUI/UX設計にもたらすメリット
配色・フォント・アニメーションなどの微細な違いがユーザーの印象や感情に与える影響を数値化・可視化できることが、感性工学の大きな強みです。「高級感を感じるボタン配置」や「安心感を与える配色」など、主観的になりがちな判断に一定の論理と再現性を持たせることが可能です。ユーザビリティテストだけでは測れない「感性評価」を取り入れることで、UI改善の精度が向上します。
感性評価をどう実装に活かすか
顧客インタビューやペルソナ分析の中で、感情語(例:柔らかい、安心、シャープ、先進的など)を抽出します。感性評価指標(SD法など)を使ってUIのデザイン方向を可視化することが可能です。さらに、アイトラッキングや視線マップなども併用することで、より定量的な分析も実現できます。
感性工学×UXデザインの実践事例
サンアンドムーンが関わったプロジェクトでは、感性工学の視点がUI/UX改善に活かされています。高齢の患者様やご家族が主なユーザーとなる病院ポータルサイトでは、「清潔感」「安心感」「信頼性」をキーワードにUIデザインを設計。白を基調にした色彩設計とアイコン・写真による視覚的ナビゲーションを取り入れ、不安を感じさせない導線設計を実現しました。教育機関向けの採用サイトでは、「誠実さ」「親しみやすさ」「自分らしく働ける環境」といった価値観を色味や構成に落とし込み、柔らかいタイポグラフィと余白を活かしたレイアウト設計を実施。製造業メーカーのブランドページでは、製品の機能説明だけでなく「先進的」「高性能」「堅牢」といったブランドイメージをビジュアルとして伝えるため、プロダクト写真のディレクションや色調設計(寒色・無彩色ベース)によって、感性と一致したUIを展開しました。
まとめ
「なんとなく良い」「信頼できそう」といった感覚は、感性工学によって再現性のあるデザインへと変換できます。サンアンドムーンでは、ユーザーの無意識の感情まで丁寧に掬い取り、それをUI/UXに落とし込むデザイン支援を行っています。機能性だけでは伝わらない価値を、感性という視点から設計することが、心に残る体験をつくるための第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。





























