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見出しがすべてを決める|スキャニング前提見出し

今回のテーマは、人がWebページを「拾い読み」する習性と、それを前提にした見出しの設計です。私たちは文章を一字一句読んでいるようでいて、実は最初の数秒で見出しだけを飛ばし読みしている――その事実を起点に、見出しの役割を考えていきます。

気になる記事を開いたのに、本文はほとんど読まず、太字の見出しだけを上から下へスッと目で追って、そのままページを閉じた。そんな経験は、きっと誰にでもあるはずです。決して失礼なわけでも、せっかちなわけでもありません。それは人の脳が情報の洪水を生き抜くために身につけた、ごく自然な読み方です。私たちサンアンドムーンがUXデザインの出発点を「人の自然な読み方を尊重すること」に置くのは、読み手に「きちんと読んでください」とお願いするのではなく、拾い読みされても伝わる設計こそが本当に親切なつくり方だと考えているからです。

人は「読む」前に「探して」いる

心理学の世界では、Webページを開いた人がまず行うのは「読む」ことではなく「探す」ことだと言われています。この拾い読みの行動を、スキャニング(Scanning)と呼びます。目的の情報がどこにあるかを素早く見極めるために、人の目はページ全体をざっと走査し、手がかりになりそうな大きな文字――つまり見出し――に次々と着地していきます。本を一冊腰を据えて読むときの目の動きとは、まるで別物なのです。

これは、書店で目当ての一冊を探すときの動きによく似ています。私たちは棚の本を一冊ずつ手に取って中身を確かめたりはしません。背表紙のタイトルだけをサッと眺め、ピンとくるものがあれば、はじめてその本を抜き出します。Webページの見出しは、まさにこの背表紙の役割を担っているのです。本文がどれだけ充実していても、背表紙にあたる見出しが素通りされてしまえば、その中身が読まれることはありません。

見出しは「飾り」ではなく「道しるべ」

見出しというと、本文を区切るための飾り、あるいは少し大きめの文字、くらいに思われがちです。けれど拾い読みを前提に考えると、その役割はまったく違って見えてきます。見出しは、急いでいる読み手のための道しるべです。ページの全体像を一瞬で伝え、「この先に自分の知りたいことがあるかどうか」を判断させる、いわば案内板の連なりなのです。

だからこそ、見出しだけを順に読んでいけば記事のあらすじが頭に入る――そんな構成が理想です。私たちが手がけるWebサイトの構成案でも、まず見出しだけを抜き出して並べ、それだけで話の流れが伝わるかどうかを必ず確認します。この「見出しが要約になっている」状態は、情報の優先順位を整理して視線を導くという点で、視覚的階層の考え方とも深くつながっています。見た目の大きさだけでなく、見出しの「言葉そのもの」が階層をつくるのです。

「内容を語る見出し」が拾い読みを助ける

では、拾い読みを助ける見出しとは、どんな見出しでしょうか。鍵になるのは、見出しだけで中身が想像できるかどうかです。たとえば「ポイント1」「その他」といった見出しは、文字としては存在していても、読み手には何の手がかりも与えてくれません。一方で「申し込みは3ステップで完了します」のように、中身を一文で語る見出しは、本文を読まなくても要点が届きます。気の利いたキャッチコピーよりも、率直に内容を伝える一行のほうが、急いでいる読み手にはずっと優しいのです。

この「言葉で内容を伝える」工夫は、最初と最後が記憶に残りやすいという系列位置効果とも相性のよい考え方です。読み手の目に最初に飛び込む見出しと、最後に残る見出し。そこに具体的な言葉を置けるかどうかで、ページから持ち帰ってもらえる印象は変わってきます。見出しを「飾り」から「道しるべ」へと書き換えること――それが、拾い読みされても伝わるページへの近道です。

まとめ

人はWebページを「読む」前に、まず見出しだけを拾い読みしています。これがスキャニングと呼ばれる読み方で、目的の情報を素早く探すために身についた自然な習性です。だからこそ見出しは、本文を区切る飾りではなく、急ぐ読み手のための道しるべとして設計する必要があります。「ポイント1」のような中身の見えない見出しではなく、内容を一文で語る見出しを並べ、それだけで記事の要約になる状態を目指す。私たちサンアンドムーンも、見出しだけを抜き出して話の流れが伝わるかを必ず確かめています。スキャニングという読み方の仕組みを知ることが、拾い読みされても伝わるWebサイトへの第一歩になります。

記事監修

中谷 浩和

中谷 浩和

株式会社サンアンドムーン|代表取締役

1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。

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