整理された情報が並んでいて、読めばわかる。なのに、なぜか問い合わせのボタンを押す気になれない——そんなサイトに出会ったことはないでしょうか。逆に、特別に凝ったデザインでもないのに、なんとなく「ここに頼んでみたい」と思えるサイトもあります。この差はどこから来るのでしょうか。UXデザインの出発点を、私たちサンアンドムーンは「情報ではなく、伝わる体験の設計」に置いています。
訪問者は、情報より”雰囲気”を感じている
人がWebサイトを訪れるとき、意識的に文章を読む前に、もっと直感的な判断が先に起きています。「なんかいい感じ」「なんか信頼できそう」「なんか合わなそう」——この”なんか”が、次の行動を大きく左右します。
この直感は、色使い、フォント、写真の雰囲気、言葉のトーン、ページの余白感など、さまざまな要素が合わさって生まれます。どれかひとつが突出して優れていればいいというわけではなく、それらが一貫した印象を生み出しているかどうかが鍵です。
たとえば、「温かみのある会社です」と書いてあっても、サイト全体がクールで無機質なデザインだったら、言葉と雰囲気がちぐはぐに感じられます。ユーザーはその矛盾を、言葉でなく感覚で受け取ります。雰囲気と言葉が揃っているとき、初めて「伝わる」という状態が生まれるのです。
ブランドとデザインが揃うと、信頼が生まれる
「ブランドらしさ」と「デザインの表現」が一致したとき、Webサイトには独特の力が宿ります。それは「信頼感」と呼べるものです。人は、一貫しているものを信頼します。言葉で言っていることと、見た目が伝えていることと、実際の対応が揃っているとき、「この会社は本物だ」という感覚が生まれます。
逆に、サイトはきれいなのに問い合わせへの返答が冷たかったり、温かいトーンで書かれているのにデザインが近寄りがたかったりすると、どこかに「しっくりこない感」が残ります。ユーザーはその不一致を、瞬時に感じ取ります。
ブランドとデザインを揃えるためには、「自分たちはどんな会社か」という問いに、チーム全体で答えを持っておく必要があります。ひとつの言葉にまとまっていなくても構いません。「こういう会社でありたい」というイメージが共有されていれば、デザインの判断も言葉の選び方も、自然に揃ってきます。
「らしさ」を、Webサイトに丁寧に乗せていく
会社の「らしさ」をWebサイトに反映させることは、一度やって終わりではありません。写真の選び方、文章のリズム、見出しのつけ方、問い合わせフォームの文言——細部に至るまで、らしさをどう表現するかの判断が積み重なっています。
たとえば、手仕事を大切にする会社なら、写真は「人の手」が写り込むものを選ぶといった工夫があります。アットホームな会社なら、スタッフの顔が見えるページを充実させる。専門性を伝えたいなら、読み物コンテンツで知識と姿勢を丁寧に発信する——どれも「らしさをWebに乗せる」行為です。
らしさが乗ったWebサイトは、ユーザーに「この会社のことをもっと知りたい」という気持ちを引き出します。情報の正確さと同時に、「この人たちに頼んでみたい」という感情的な動機を生み出すこと。それがWebサイトに「想いを込める」ことの、本当の意味ではないでしょうか。
まとめ
訪問者はWebサイトを「読む前に感じる」ものであり、情報よりも雰囲気が最初の印象を作ります。ブランドのらしさとデザインの表現が一致したとき、信頼感が生まれ、ユーザーの行動につながりやすくなります。らしさをWebに乗せることは、写真・言葉・デザインの細部に至るまで一貫した判断を積み重ねることです。想いの込もったWebサイトは、情報の正確さを超えて「この会社に頼みたい」という感情的な動機を生み出します。会社の「らしさ」をWebサイトで丁寧に表現することが、次のお客様との出会いへの第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。




























