前回の記事(Vol.1|Webサイトは完成した瞬間から古くなる)では、Webサイトは完成した瞬間から変化し続けること、公開はゴールではなく「仮説の提出」であることをお伝えしました。今回はその続きです。
「なんとなくサイトが古い気がして」「競合が新しくしたから、うちも……」「なんとなくイメージを変えたくて」——Web担当者や経営者から、こうした声を聞くことは珍しくありません。その気持ちはよくわかります。ただ、「なんとなく」で動いた改善は、多くの場合「なんとなく変わっただけ」という結果に終わってしまいがちです。UXデザインの出発点を、サンアンドムーンは「課題の言語化」に置いています。
「変えたい」の裏にある、本当の課題
「サイトを変えたい」という言葉を丁寧に見ていくと、実はさまざまな意味が混在していることがあります。「問い合わせが少ない」「自社の強みがうまく伝わっていない気がする」「採用応募が来ない」「スマホで見るとぐちゃぐちゃ」——これらはすべて異なる課題であり、それぞれ異なるアプローチが必要かもしれません。たとえば問い合わせが少ない場合、原因は「問い合わせボタンの位置が合っていない」かもしれないし、「サービスの説明が難しくて不安になって離脱している」かもしれません。前者ならUIの調整で対応できますが、後者はコンテンツ設計の見直しが必要です。「変えたい」という感覚はとても大切な直感ですが、そのまま走り出すと的外れな改善にコストをかけてしまうこともあるでしょう。まず「何が問題で、誰が困っているのか」を言葉にすることが、改善の出発点ではないでしょうか。
「問いを立てる」ことが改善の質を決める
Webサイトの改善において、とても大切なスキルのひとつが「問いを立てる力」かもしれません。「なぜ問い合わせが少ないのか?」ではなく、「問い合わせページまでたどり着けていないのか、それともたどり着いたけど送信していないのか?」——このように問いを分解することで、調べるべきデータが見えてきます。サンアンドムーンでは、改善プロジェクトの冒頭に必ず「課題の分解ワーク」を行います。担当者の方々がぼんやり感じていたモヤモヤを、「どのページで」「誰が」「何に困っているか」と整理することで、改善の優先順位と方向性が明確になっていきます。
課題が明確になると、解決策が変わる
「なんとなく変えたい」が「スマートフォンでのフォームの送信が難しい」に具体化されると、やるべきことがはっきりします。デザイン全体のリニューアルではなく、フォームUIの改善とボタンサイズの見直しから始めればいい。こうして、限られた予算と時間で最も効果的な施策を選べるようになります。課題を言語化することは、改善への「地図を描く」ことです。地図がなければ、どんなに速く走っても目的地にはたどり着けません。
まとめ
「なんとなく変えたい」という感覚は、改善のきっかけとして大切なシグナルです。しかしその感覚のまま動き出すのではなく、「何が」「誰にとって」「なぜ」問題なのかを言語化することが、成果につながる改善の出発点になります。課題を明確にすることが、限られたリソースで最大の成果を生む改善への第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。





























