今回のテーマは、ゴールデンサークル理論と人間の脳の働きの関係です。「なぜ」から伝えることが人の心を動かす理由を、脳の構造という視点から掘り下げていきます。
ゴールデンサークル理論は、Why(なぜ)→ How(どうやって)→ What(何を)という3つの問いを中心から外へと広がる同心円で表現するフレームワークです。多くの企業は「何を売っているか(What)」から話し始めますが、共感されるブランドは「なぜそれをするのか(Why)」から語ります。この理論が強力なのは、マーケティングの話だけでなく、人間の脳が情報を処理する順番とも驚くほど一致しているからです。私たちサンアンドムーンがブランド・コミュニケーション設計の出発点を「なぜから始めること」に置くのは、感情に届く順番で伝えてこそ、行動につながると考えているからです。
「伝える順番」が、心を動かす順番になる
ゴールデンサークル理論は、人間が何かを判断するとき、まず感情で「感じて」、次に理屈で「納得する」という順番を可視化したものです。「何を売っているか」を先に伝えても、論理的には理解されますが感情は動きにくい。「なぜそれをするのか」から伝えると、感情が先に動き、納得が後からついてきます。これが伝える順番の違いがもたらす大きな差です。
ゴールデンサークルと脳の構造——3つの階層はどこに対応するか
ゴールデンサークルの「Why → How → What」という伝達順序は、脳の構造と対応しています。中心にある「Why(なぜ)」は、感情や本能的な判断を担う大脳辺縁系(limbic system)に対応します。ここは、人間が「快・不快」や「信頼・不信」を直感的に判断する部分であり、言語を使わずとも物事の”意味”を理解しようとする領域です。中間の「How(どうやって)」は、行動の計画や手順・実行に関係する領域と重なり、「納得して動く」ための橋渡しとして機能します。そして最も外側の「What(何を)」は、大脳新皮質——特に言語や分析を司る部位に対応します。
| ゴールデンサークル | 対応する脳の部位 | 主な役割 |
|---|---|---|
| Why(なぜ) | 大脳辺縁系 | 感情、直感、信念、意思決定の起点 |
| How(どうやって) | 前頭前野・大脳皮質の一部 | 行動の計画、手順、実行に向けた準備 |
| What(何を) | 大脳新皮質 | 言語、分析、論理的思考 |
「言語化できない確信」が行動を起こさせる
ゴールデンサークル理論が示す重要な洞察のひとつは、「人は感情で決めて、理屈で正当化する」ということです。大脳辺縁系は、言語を持たないにもかかわらず、私たちの意思決定に最も大きな影響を与えています。「なぜか好きなんだよね」「なんとなく信頼できる」——そうした感覚は、実は非常に重要な判断シグナルです。だからこそ「Why」から語ることで、相手の感情に先に届くことができ、その後の論理的な説明(How・What)によって確信が固まっていきます。UI/UX設計においても、コピーや導線の設計で「なぜこのサービスが存在するのか」を伝える工夫が、ユーザーの行動を後押しします。
まとめ
ゴールデンサークル理論は、「脳が情報を処理する順番」に合わせて伝えることで、理解と共感の質が変わるという洞察を与えてくれます。Whyから語ることは、感情を先に動かし、その後の論理的な理解で確信を強化する——この順番がブランドやUI設計において大きな差を生みます。「なぜ」を言葉にできることが、ユーザーの感情に届くコミュニケーションへの第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。




























