このたび、100円ショップのセリアから、雑誌「月刊ムー」の世界観を映したグッズが登場しました。ポーチやステッカー、クリアファイル、うちわなど、数十種類にわたるラインナップです。その多くにあしらわれた三角形のタイトルロゴは、私たちサンアンドムーンの創業者でありグラフィックデザイナーの中谷匡児が手がけたものです。発売のお知らせとあわせて、このロゴの背景を少しご紹介します。
セリアで発売中の「ムー」グッズ
今回セリアに並んだのは、ポーチや巾着といった布小物から、ステッカー、クリアファイル、ノート、ボールペン、そしてうちわや扇子まで、幅広い顔ぶれです。開封するまで柄がわからないランダム仕様のアイテムもあります。かつては雑誌の表紙で目にするだけだったロゴが、こうして手のひらサイズの日用品として、暮らしのなかに入ってきました。見慣れたマークを思わぬ場所で見かけると、どこか嬉しい気持ちになります。商品の詳細は、セリア公式サイトの特集ページでご覧いただけます。
1973年に生まれたロゴ
「月刊ムー」は、世界の謎と不思議に迫るミステリーマガジンとして、長く親しまれてきました。その象徴であるタイトルロゴが誕生したのは1973年。私たちサンアンドムーンの創業者でありグラフィックデザイナーの中谷匡児が、クライアントである学習研究社とともに手がけたものです。このロゴは、のちに「日本のタイポグラフィ展」の選抜作品にも選ばれました。以来、半世紀にわたって、雑誌の「顔」であり続けています。当時つくられた形が、時代の移り変わりを越えて今も通用している。これは、ロゴにとって幸福なことだと思います。会社やサービスの「らしさ」を一つの形に託す意味については、以前の記事「ブランドとは「らしさ」である」でもお伝えしました。長く使われるマークには、生まれた時から普遍性が備わっています。
シンプルな形に隠された視覚調整
一見すると、ムーのロゴは三角形を並べただけのシンプルな形です。ところが、その単純さの裏には、繊細な調整が隠されています。正確な正三角形を並べて実際のロゴに重ねてみると、ぴたりとは合いません。全体がわずかに高さを抑えた二等辺三角形になっていたり、線の太さや内側の余白が少しずつ整えられていたりと、細部に手仕事の跡が見てとれます。人の目には、横線は縦線より太く見え、囲まれた内側の空間は実際より狭く感じられます。こうした錯覚を打ち消すために、あえて寸法をずらしておく。これがデザインの「視覚調整」です。興味深いのは、その調整をやり過ぎていないこと。三角形が持つ神秘的な雰囲気を損なわないよう、気づかれない程度にとどめられています。第一印象がその後の評価を左右する仕組みについては、「ブランドビジュアルが与える心理的インパクト」でも触れました。簡単そうに見える形ほど、丁寧に設計されているものです。
中谷匡児が手がけた、ほかのロゴ
中谷が手がけたロゴは、ムーだけではありません。たとえば、アイドル情報誌として親しまれた月刊「ボム」のタイトルロゴ(1979年)も、そのひとつです。誌面の性格に合わせ、ムーとは対照的な、明るく親しみやすい表情をもっています。時代を下ると、中国を代表する放送局・中国中央電視台(CCTV)のCIロゴマーク(1998年)も手がけました。雑誌の世界観から、国境を越える放送局のシンボルまで、扱う対象はさまざまです。それでも、「一目で伝わり、長く使える形」を目指す姿勢は、どの仕事にも共通しています。こうした一つひとつの積み重ねが、いまのサンアンドムーンのデザイン観をかたちづくってきました。
何気なく手に取った日用品に、半世紀前のデザインの工夫が息づいている。そう考えると、いつもの買い物も少し違って見えてきます。セリアで「ムー」のロゴを見かけたら、その三角形にあらためて目を向けてみてください。創業以来、中谷匡児が大切にしてきたのは、流行に左右されず、時間に耐える「一目で伝わる形」でした。私たちサンアンドムーンは、その姿勢をこれからも受け継いでいきます。表現の場が紙からWeb、そしてデジタルへと広がった今も、変わらない芯を次の時代へと、丁寧につないでいきたいと考えています。




























