このシリーズでは、変化を望みながらも「何から手をつければいいかわからない」と感じている中小企業の経営者・担当者の方に向けて、Webを起点にした会社づくりのヒントをお届けします。全6回を通じて、小さな一歩が積み重なっていく様子を、一緒にたどっていきましょう。
朝、自社のWebサイトを開いて、なんとなく画面を閉じてしまったことはないでしょうか。「悪くはないけれど、何かが違う気がする」——その感覚、実はとても正直なシグナルかもしれません。言葉にはしにくいけれど、どこかに違和感がある。それが変化のきっかけになることは、思いのほか多いのです。UXデザインの出発点を、私たちサンアンドムーンは「この小さな違和感」に置いています。
「変えたい」という感覚は、正しいシグナルである
「なんとなく変えたい」という気持ちは、ぼんやりしているようで、実は鋭い観察から生まれています。たとえば、問い合わせが以前より減った気がする、お客様に「ホームページを見てもよくわからなかった」と言われた、競合他社のサイトを見てなんとなく見劣りした——そういった体験の積み重ねが、あの「何か変えたい」という感覚に結びついているのです。
この感覚を「気のせい」と流してしまうのは、少しもったいないかもしれません。人が何かを「おかしい」と感じるとき、多くの場合、そこには現実のズレが隠れています。お客様の目線と自社の発信内容がすれ違っている、会社の強みがうまく伝わっていない、サイトの構造がユーザーの行動と合っていない——そのどれかである可能性は十分あります。
「変えたい」という感覚は、会社が成長しようとしているサインでもあります。それを大切に育てることが、次の一手への第一歩になるのです。
なぜWebが、最初の一手になるのか
会社を変えようとするとき、選択肢はたくさんあります。新しいサービスを開発する、営業方法を見直す、人を採用する——どれも大切な取り組みです。では、なぜWebなのでしょうか。
理由のひとつは、Webサイトが「会社の顔」として24時間働き続けているからです。営業担当者が眠っている夜中でも、お客様はサイトを見ています。採用候補者が会社を調べるとき、取引先が信頼性を確認するとき、まず開かれるのがWebサイトです。その顔が「なんとなく古い」「なんとなく伝わらない」状態のままでは、せっかくの機会を逃してしまうかもしれません。
もうひとつの理由は、Webは比較的早く動けることです。新しい商品の開発には時間と費用がかかります。でも、Webサイトのメッセージを整えたり、ページの構成を見直したりすることは、会社の規模に関係なく取り組めます。小さな改善の積み重ねが、実感できる変化につながっていくのです。
Webを変えることは、会社を見つめ直すことでもある
Webサイトを本気で整えようとすると、必ずといっていいほど、こんな問いに突き当たります。「私たちのお客様は、いったい誰なのか」「競合と比べて、私たちにしかできないことは何か」「訪問者に、どんな行動を起こしてほしいのか」——これらは、Webの問いであると同時に、会社そのものへの問いです。
デザインの前に言葉を整え、言葉の前にメッセージを決め、メッセージの前にターゲットを定める。この順番で考えていくと、Webサイトはただの「見栄えのいいページ」ではなく、会社の考え方や姿勢を伝えるメディアになっていきます。
Webを変えるとは、会社の自己紹介を刷新することでもあります。少し手間はかかりますが、その過程で「自分たちは何者で、誰のために何をしているのか」が、鮮明になっていくことがあります。それ自体が、会社にとってとても価値のある時間になるのです。
まとめ
「何かを変えたい」という感覚は、見過ごされがちですが、実は会社の現状を鋭く映したシグナルです。Webサイトは24時間稼働する会社の顔であり、比較的小さな投資から改善を始められる出発点でもあります。Webを整えるプロセスは、メッセージやターゲットを見直す作業と並走するため、会社そのものを見つめ直す機会にもなります。「なんとなく変えたい」という気持ちを丁寧に拾い上げることが、会社の次の一歩への第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。































