前回の記事(Vol.3|ユーザーは、思った通りに動かない)では、作り手とユーザーの認知にギャップがあること、そしてそれを前提に設計することの重要性をお伝えしました。今回はその続きです。
今回のテーマは、Web改善における「スモールスタート・スモールビクトリー」の考え方です。大きな改善を一気に進めようとして動けなくなる罠を回避し、小さな一手から成果を積み重ねる設計思想を整理していきます。サンアンドムーンは、Web改善の出発点を「小さく勝つ経験の積み重ね」に置いています。
なぜ「大きな改善」は難しいのか
「どうせやるなら全部リニューアル」——この発想は気持ちとしてよくわかります。ただ、全体を一気に変えてしまうと、改善後に成果が上がったり下がったりしたとき、「どの変更が原因だったのか」がわからなくなってしまうのです。デザイン・コンテンツ・構成・CTAをすべて同時に変えた場合、問い合わせ数が増えても「どれが効いたのか」が不明のまま。逆に減ったときは、「全部変えたのに……」という虚しい結果だけが残ってしまうかもしれません。大きく変えることにも意味はありますが、「何が効いたかを知る」ためには、変数を絞った小さな改善がとても有効です。お料理に例えるなら、全メニューを同時に変えてお客さんの反応が良くなっても、何のおかげかわかりません。一品ずつ変えてこそ、お客さんの好みが見えてくるものですよね。
「小さく勝つ」ことが次の改善を生む
スモールビクトリーとは、「小さな成功体験を積み重ねること」です。たとえば、問い合わせボタンの文言を「お問い合わせ」から「まずは無料でご相談」に変えるだけで、クリック率が変化することがあります。この小さな変化を丁寧に確認し、「効果があった」という実感を積み重ねていくことが、次の改善への動力になります。改善の習慣は、大きな成功よりも小さな発見の連鎖から生まれます。「変えてみたら、何かが変わった」という経験が、チームのWeb改善への関心と自信を育てていくのではないでしょうか。
どこから始めるか、の選び方
「小さく始める」といっても、どこから手をつければいいか迷いますよね。サンアンドムーンでは、まず「離脱が多いページ」と「目標に近いページ」に注目することをお勧めしています。離脱が多いページは、何かがユーザーの邪魔をしているサインです。目標に近いページ(問い合わせや購入の直前など)は、少しの改善が成果に直結しやすい場所です。この2つを起点に、最初の小さな一手を選んでみてください。
まとめ
大きな改善を一気に進めるよりも、変数を絞った小さな改善を積み重ねることが、Webサイトを育てる近道です。小さな成功体験(スモールビクトリー)を繰り返すことで、改善の習慣とチームの自信が生まれます。まず「離脱が多いページ」か「目標に近いページ」から始めることが、成果につながるWeb改善の第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。






























