「アフォーダンス」は、優れたUI/UXの静かなナビゲーター

「アフォーダンス」は、優れたUI/UXの静かなナビゲーター

ユーザーが迷わず、直感的に操作できるインターフェースの背景には、「アフォーダンス」という重要な設計思想が存在します。聞き慣れない言葉かもしれませんが、私たちが日々操作するWebサイトやアプリの「使いやすさ」に深く関わっています。

アフォーダンスとは何か？

アフォーダンスとは、「そのモノの形や性質が、人に特定の行動を想起させること」を意味します。もともとはアメリカの心理学者ジェームズ・J・ギブソンによって提唱された概念で、人間と環境の関係性の中で「何ができそうか」という行動の可能性を説明する言葉です。

たとえば、ドアに縦長の取っ手がついていれば「引いて開けるものだ」と直感的にわかります。一方で、ドアに押し板のような平らな面があれば「押して開けるものだ」と想像します。これがまさにアフォーダンスです。形や配置、材質といった情報が、ユーザーに「どう操作すべきか」を自然に伝えてくれるのです。

もうひとつの例は椅子です。背もたれがあり、座面があり、脚がついている。その形状だけで「座るものだ」と私たちは理解します。説明書きがなくても、誰もが迷わずその用途を認識できるのは、椅子そのものが「座れる」というアフォーダンスを備えているからです。

つまりアフォーダンスとは、「使い方を説明しなくても、見れば分かる」状態を生み出す設計上のヒントであり、私たちが日常的に行っている動作の多くは、こうしたアフォーダンスによって導かれています。

なぜUI/UXデザインにおいてアフォーダンスが重要なのか

UIやUXの領域では、アフォーダンスは「ユーザーに操作方法を説明しなくても自然に伝えるための設計手法」として活用されています。具体的には、次のような形でユーザーに行動を促します。

• 立体的なボタン → 「押せそう」と感じさせる
• 下線が引かれたテキスト → 「リンクである」と認識させる
• フォームの枠線 → 「ここに入力できる」と想起させる

これらはユーザーにとっての「知覚されたアフォーダンス」であり、実際に操作できるかどうかに加えて「操作できそうに見えるか」が非常に重要になります。特にWebサイトやアプリのUIでは、ユーザーが初見で迷わず操作できるかどうかが体験全体の質に大きく影響します。

アフォーダンスが適切に働いていれば、ユーザーは直感的に「ここを押せばよい」「この先に進めばよい」と理解できます。反対に、視覚的な手がかりが不足しているUIでは、ユーザーが混乱し、離脱率の増加や使い勝手の悪さにつながります。

そのため、UI/UXデザインにおいてアフォーダンスを設計することは、ユーザビリティとエンゲージメントを高めるうえで欠かせない要素となっています。

UI/UXにおけるアフォーダンスの働き

WebやアプリのUIでは、「見た目」と「操作の意味」が一致していることが、ユーザー体験の質を大きく左右します。以下はその一例です。

• 影や立体感で「クリックできるボタン」と認識させる
• 下線が引かれた文字列で「リンク」を示す
• 矢印アイコンで「スクロール」や「次に進む」を示唆する

ユーザーに余計な説明をせず、自然と操作へと導くこれらの要素が、アフォーダンスの実例です。

アフォーダンスの「手がかり」とは

アフォーダンスを成立させるには、それを伝える「手がかり（クルー）」が必要です。これは、視覚・動作・経験などによって与えられ、ユーザーが操作の方法を想像する助けとなります。

• 視覚的手がかり：ボタンの色・形・質感・陰影など
• 動的な手がかり：ホバー時のアニメーションやクリック時の変化
• 経験的手がかり：これまでのWeb体験からくる慣れ（例：ハンバーガーメニュー）

サンアンドムーンが考える「アフォーダンス重視のUI設計」

サンアンドムーンでは、UI/UXデザインにおいて「操作の意味が伝わるかどうか」を最優先に考えます。特に医療機関や教育機関、行政・BtoB領域では、ユーザーがWebに慣れていないことも多く、「意図が伝わるUI」であることが不可欠です。

たとえば、複雑な機能を持つシステム画面においても、次に何をすればよいかが一目でわかる設計や、「押せそう」「入力できそう」という視覚的な配慮を重視します。これは見た目の美しさだけでなく、ユーザーが自ら行動を起こせるよう導く「気づきのデザイン」でもあります。

また、プロトタイピングやユーザーテストを通して、アフォーダンスが十分に働いているかを検証し、細部までブラッシュアップしていきます。