今回のテーマは、UIデザインの変遷です。スキューモーフィズムからフラットデザイン、そして新たな表現としてのリキッドグラスまで——デザインがどのように変化し、それぞれどんな意味を持つのかをUXの視点から整理していきます。
デジタルUIのデザイン様式は、技術の進化とユーザーの成熟に合わせて大きく変化してきました。私たちサンアンドムーンがデザイン変遷の理解を重要視するのは、なぜその様式が生まれ、なぜ変化したのかを知ることが、現在の設計判断の根拠になると考えているからです。
ページコンテンツ
スキューモーフィズムとは——現実を模倣したデザイン
スキューモーフィズム(Skeuomorphism)は、現実世界の素材や形状を模したデザイン手法です。木目調の本棚、革張りのカレンダー、立体的なボタンなど、現実にある物をモチーフにしたUI表現が代表例です。デジタルに不慣れなユーザーが多かった時代、物理的なアナログ体験をそのまま模倣することで、操作へのハードルを下げる役割を果たしました。「ゴミ箱」アイコンはその象徴であり、不要なファイルをドラッグして捨てるという操作が日常の行動と結びつくことで、初めてパソコンに触れる人でも直感的に理解できました。
なぜスキューモーフィズムは終わったのか
時が進むにつれ、スキューモーフィズムには限界が見えてきます。CDアイコンはストリーミング全盛の時代に意味をなくし、受話器アイコンも若い世代には伝わりにくくなりました。「リアルに似せる」必要性が薄れると、スキューモーフィズムはただの「重くてうるさいデザイン」になりかねません。こうした状況を受けて、よりシンプルなデザイン様式への移行が進みました。
フラットデザインへの転換——シンプルさがUI標準になった
フラットデザインは、影や質感を排除し、色・アイコン・タイポグラフィだけで構成されるシンプルなスタイルです。ユーザーがデジタル操作に慣れたことで、「現実に似せる必要」がなくなり、逆に情報構造が整理されたシンプルなUIの方が求められるようになりました。デバイスの表示性能や処理速度が向上したことで、グラフィックリソースを軽量化してパフォーマンスと可読性を重視した設計も可能になりました。フラットデザインはユーザーの「デジタルへの習熟」が生み出した必然的な進化といえます。
リキッドグラス——質感と未来感の融合
近年登場した「リキッドグラス(Liquid Glass)」は、透明性・光の屈折・流動的なアニメーションを特徴とする新しいデザイン言語です。フラットデザインの「シンプルさ」を保ちながら、視覚的な奥行きや動きの豊かさを加えることで、「使いやすく、かつ美しい」体験を目指すアプローチです。スキューモーフィズムの「質感」とフラットデザインの「明快さ」を融合させた進化型とも見られており、これからのUIデザインの方向性を示す重要な動きです。
デザイン様式の変遷から学べること
スキューモーフィズムからフラットデザイン、そしてリキッドグラスへの変遷は、技術の進化とユーザー体験への理解の深まりを映し出しています。デザインは「美しさ」や「トレンド」だけで変わるのではなく、「ユーザーが何を必要としているか」「テクノロジーが何を可能にするか」という問いへの答えとして進化します。この視点を持つことで、流行に振り回されず、本質的なUI設計の判断ができるようになります。
まとめ
UIデザインの変遷は、ユーザーの成熟と技術の進化が重なることで生まれます。スキューモーフィズムが「親しみやすさ」を、フラットデザインが「明快さ」を追求したように、それぞれの時代にはそれぞれの理由がありました。過去の変遷を知ることで、現在のデザイン選択に根拠が生まれます。「なぜこのデザインか」を言語化できることが、時代を越えて使われるUI/UX設計への第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。






























