今回のテーマは、ゲシュタルト心理学の原理をUIデザインに応用する考え方の続編です。閉鎖性・連続性・対称性という3つの原理に注目して、視覚的な体験をどう設計に活かせるかを見ていきます。
人の目は、不完全なものを見ても「補完して」全体として理解しようとします。線が続いていると感じたら、その方向へ視線が流れる。左右が揃っていると、安定していると感じる。こうした無意識の認知のはたらきを知っておくと、デザインの選択に確かな根拠が生まれます。私たちサンアンドムーンがUI設計の出発点を「ユーザーの無意識」に置くのは、直感的に使えるインターフェースは、心理の流れに沿って設計されていると考えているからです。
閉鎖性の原理——欠けていても「見えてしまう」力
閉鎖性(Closure)とは、図形やパターンの一部が欠けていても、脳が自動的に補って「全体」として認識しようとする現象です。たとえばロゴやアイコンで一部が切れていても「丸だ」「顔だ」と認識できるのは、まさにこの原理が働いているからです。
UIデザインへの応用は幅広くあります。アイコンの線やパーツが省略されていても、閉鎖性によって直感的に意味が伝わります。ボタンの一部しか見えていなくても、ユーザーは「押せそう」と感じて補完します。またローディング表示では、動きのある不完全な図形が「円」に見えることで、待機中であることが視覚的に伝わります。省略と補完を意図的に設計することが、シンプルで伝わるUIをつくる鍵になるのです。
連続性の原理——視線は「流れ」に乗る
連続性(Continuity)は、人が視覚的に「なめらかなライン」を好み、分断されていない情報をひとつの流れとして捉える傾向です。一直線に並んだアイコンや、グラデーションでつながる背景などは、視線を自然に誘導しやすくなります。
この原理を活かした導線設計では、ナビゲーションからCTAボタン、問い合わせへと視線を誘う流れをつくることができます。リストやコンテンツを整列させるとスクロール方向の「流れ」が生まれ、スライダーやステップバーも情報が途切れずに続いている印象を与えることで、操作を直感的にします。視線の流れをデザインすることは、ユーザーを自然にゴールへ導くことでもあります。
対称性の原理——安定感と信頼を生むデザイン
対称性(Symmetry)とは、人が左右や上下でバランスの取れた構成を「美しい」「安定している」と感じる心理傾向です。名刺やロゴ、建築物に対称性が用いられるのは、無意識のうちに「整っている」「安心できる」と感じさせるからです。
UIへの応用として、ファーストビューのヒービジュアルやキャッチコピーを中央配置することで、信頼感ある印象を与えられます。フォーム設計では対称性を保つことで、ユーザーが情報入力に集中しやすくなります。ブランドサイトのレイアウトでも、軸を揃えることで企業の「ブレない姿勢」を視覚的に表現できます。対称性は、見る人に静かな安心感を届ける、地味でありながら強い設計原理なのです。
まとめ
ゲシュタルト原理は、ユーザーが「無意識にどう見ているか」を読み解く鍵になります。閉鎖性・連続性・対称性はいずれも、派手な演出がなくても、視覚的な理解度や操作性を底上げする「静かな力」です。コンテンツの構造やナビゲーション設計を行う際に、こうした心理原則を設計の判断に加えることで、より快適で直感的な体験をつくれます。人の認知の流れに沿って設計することが、使われるUIをつくるための第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。


























