今回のテーマは、SMART目標設定です。あいまいな目標をチームで共有できる具体的な設計指針に変える、この考え方をUXデザインや Web制作の現場から見つめ直していきます。
「コンバージョンを上げたい」「使いやすくしたい」——こうした声は現場でよく聞かれます。ところが、具体的にどうすればよいか、達成できたかどうかをどう判断すればよいかが曖昧なまま、プロジェクトが進んでしまうことも少なくありません。私たちサンアンドムーンがUI/UX設計の出発点を「目標の明確化」に置くのは、方向性が揃っていなければ、どんなに優れた設計も空回りしてしまうと考えているからです。
SMARTとは——目標を「動かせる言葉」に変える5つの軸
SMART とは、目標設定において守るべき5つの条件の頭文字を組み合わせたフレームワークです。ビジネスやマネジメントの分野で古くから活用されてきた考え方ですが、UI/UXデザインやWeb制作においても非常に有効です。
まず「Specific(具体的)」。目標は誰にとっても同じ意味で理解できるよう、曖昧な表現を避けて明確にします。「問い合わせを増やす」ではなく、「特定ページからのフォーム送信数を増やす」など、行動に落とし込める表現が望ましいとされます。関係者間の認識のズレを防ぐためにも、具体性は欠かせません。
次に「Measurable(測定可能)」。アクセス解析ツールや行動分析ツールを活用して、目標がどの程度達成できたかを定量的に把握します。「改善された気がする」ではなく、指標に基づいた評価が可能になります。「Achievable(達成可能)」は、現実離れした目標を設定しないという視点です。リソースや納期、体制、予算などを考慮しながら、「現状から少し背伸びすれば届く」レベルが理想とされます。チームが前向きに取り組める水準にすることで、実行可能性が高まります。
「Relevant(関連性)」は、その目標がプロジェクトのゴールやビジネス全体の方針ときちんと結びついているかを確認する視点です。局所的な改善が全体戦略から逸れていると、達成しても意味をなさないケースがあります。目的との整合性を意識することで、より戦略的な目標設定が可能になります。最後に「Time-bound(期限がある)」。いつまでに達成するかが明確であることで、進捗を追いやすくなり、優先順位の判断やスケジュール調整もしやすくなります。期限のない目標はいつまでも先送りにされがちです。
あいまいな目標をSMARTに変換する
Webサイト改善やUI/UX設計の現場でよくある「ふわっとした目標」を、SMARTに則って整理するとどう変わるのかを見てみましょう。
たとえば「Webサイトの成果を上げたい」という目標は、「3か月以内に、サービス紹介ページの直帰率を現状より改善するため、CTAボタンの位置と文言を修正する」と整理できます。こうすると、施策の具体性が増し、関係者間の共通認識が取れるようになります。「どのページで」「どの指標を」「いつまでに」改善するかがはっきりして、評価もしやすくなります。
プロジェクト管理への応用
SMARTはUI/UXだけでなく、Web制作の進行管理にも非常に相性の良い考え方です。「今月末までにトップページのコーディングを完了させる」「公開から1か月でページビューを向上させる」など、プロジェクトに関わる各フェーズで目標を明文化しておくことで、遅延や認識のズレを防ぎ、スムーズな進行を実現できます。
タスクベースのTodoリストではなく、成果ベースのSMART目標に置き換えることで、より本質的な進行管理が可能になります。チームで取り組むプロジェクトでは、目標の「共通言語」としてSMARTを用いることで、認識のブレを防ぎ、成果につながるアクションを積み上げることができます。
まとめ
SMART目標設定は、たんなるチェックリストではなく、プロジェクトの成功率を高めるための思考法です。UI/UX設計やWeb制作においては、視覚的・感覚的な要素に引っ張られがちですが、あえて数値や期限を明確にすることで、改善の方向性が定まりやすくなります。特にチームで取り組むプロジェクトでは、目標の「共通言語」としてSMARTを活用することで、認識のズレを防ぎ、成果に直結するアクションを積み重ねることができます。明確な目標を持つことが、実行力のある設計への第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。




























