今回のテーマは、人間の視野とUXデザインの関係です。「中心視野」と「周辺視野」という2つの特性を理解することが、使いやすいインターフェース設計につながります。私たちサンアンドムーンがUI設計の出発点を「視野の特性を活かすこと」に置くのは、ユーザーが無意識に反応する視覚の仕組みを理解することが、直感的なUIをつくる鍵になると考えているからです。
「見る」には中心と周辺がある
中心視野は、ものの形や色、文字の読み取りなど細かい情報の識別に特化した領域です。スマートフォンでSNSを読んだり、検索結果をタップしたりする際に使われます。一方で周辺視野は、視界の端をカバーし、空間全体の動きや違和感、明るさの変化などに敏感なセンサーです。
周辺視野——命を守るための早期警戒装置
狩猟生活を送っていた時代、私たちの祖先は中心視野で獲物を追いながら、周辺視野で茂みに潜む捕食者を察知していました。この生存本能は現代にも受け継がれており、私たちは無意識のうちに周辺視野からのわずかな違和感に反応しています。ホラー映画が恐怖の対象を画面の端に映り込ませて緊張感を高めるのも、この特性を活用した演出です。
UXデザインに活かす「視野の設計」
視野の特性はWebサイトやアプリのUI設計に直接活かせます。中心視野が向いている場所に最重要コンテンツを配置すること、周辺に控えめな視線誘導シグナルを使うこと、不必要なアニメーションや色の点滅を避けること(周辺視野が過敏に反応してストレスを生む)、フローティングバナーや動画の自動再生は慎重に扱うこと——これらは視野特性を意識したUI設計の実践例です。「何となく落ち着く」「なんか使いやすい」という感覚は、しばしば周辺視野への配慮から生まれています。
まとめ
人間の視野は「中心視野(細部の識別)」と「周辺視野(気配の察知)」の2つで成り立っています。中心視野に向けては重要なコンテンツを、周辺視野に向けては適切なシグナルと余計なノイズの排除を意識すること——この視点の積み重ねが、ユーザーに「なんとなく使いやすい」と感じさせるUIへの第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。



























