Vol.2|「なんとなく変えたい」から抜け出すために

このシリーズでは、「Webサイトを作って終わり」という考え方から少しずつ抜け出し、継続的な改善を前提にした設計思想をお届けしています。Vol.2では、改善の現場でよく起こる「なんとなくリニューアルしたい」という曖昧な課題意識を整理し、的確な改善判断の土台をつくる方法を一緒に考えていきます。「なんかサイトが古い気がして」「競合が新しくしたから、うちも……」「なんとなくイメージを変えたくて」——Web担当者や経営者から、こうした声を聞くことは珍しくありません。その気持ち、とてもよくわかります。ただ、「なんとなく」で動いた改善は、多くの場合「なんとなく変わっただけ」という結果に終わってしまいがちです。UXデザインの出発点を、サンアンドムーンは「課題の言語化」に置いています。

「変えたい」の裏にある、本当の課題

「サイトを変えたい」という言葉を丁寧に見ていくと、実はさまざまな意味が混在していることがあります。「問い合わせが少ない」「自社の強みがうまく伝わっていない気がする」「採用応募が来ない」「スマホで見るとぐちゃぐちゃ」——これらはすべて異なる課題であり、それぞれ異なるアプローチが必要かもしれません。たとえば問い合わせが少ない場合、原因は「問い合わせボタンの位置が合っていない」かもしれないし、「サービスの説明が難しくて不安になって離脱している」かもしれません。前者ならUIの調整で対応できますが、後者はコンテンツ設計の見直しが必要になります。「変えたい」という感覚はとても大切な直感ですが、そのまま走り出すと、的外れな改善にコストをかけてしまうこともあるでしょう。まず「何が問題で、誰が困っているのか」を言葉にすることが、改善の出発点ではないでしょうか。

「問いを立てる」ことが改善の質を決める

Webサイトの改善において、とても大切なスキルのひとつが「問いを立てる力」かもしれません。「なぜ問い合わせが少ないのか?」ではなく、「問い合わせページまでたどり着けていないのか、それともたどり着いたけど送信していないのか?」——このように問いを分解することで、調べるべきデータが見えてきます。サンアンドムーンでは、改善プロジェクトの冒頭に必ず「課題の分解ワーク」を行います。担当者の方々がぼんやり感じていたモヤモヤを、「どのページで」「誰が」「何に困っているか」という構造に変換していく作業です。これだけで、改善の方向性がぐっと明確になることが多いのです。問いが正しければ、答えは自ずと見えてきます。逆に問いが曖昧なままでは、どれだけデータを眺めても「で、どうすれば?」という霧の中をさまよい続けることになってしまいますよね。

「課題」と「要望」を分けて考える

改善の現場でよく起こる混乱のひとつが、「課題」と「要望」が混在してしまうことです。「トップページをかっこよくしたい」「動画を入れたい」「スライダーをつけたい」——これらは「要望」です。「問い合わせ率を上げたい」「資料請求のハードルを下げたい」——こちらが「課題」になります。要望自体は決して悪くありません。ただ、要望だけをそのまま実装しても、課題が解決するとは限らないかもしれません。「動画を入れたけど、ページの表示が重くなって離脱率が上がった」——これは笑えない実話です。要望の背景にある「本当に解決したいこと」を丁寧に掘り起こすことが、UXデザインの本領だと私たちは考えています。その対話を、改善の核心として大切にしています。

小さな「問い」から始める習慣

「課題を言語化するなんて難しそう」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はシンプルな問いから始めることができます。「先月、問い合わせはいくつあったか」「よく見られているページはどこか」「直帰率が高いページはどこか」——この3つを確認するだけで、改善の糸口が見えてくることが多いのです。難しい分析ツールや専門知識がなくても、「データを見る習慣」さえあれば、サイトはたくさんのことを教えてくれます。Webサイトは意外と正直なもので、ちゃんと向き合えば向き合うだけ、答えを返してくれますよね。課題の言語化は、そのための”聞き方”を少しずつ身につけていく作業でもあるのです。

まとめ

「なんとなく変えたい」という感覚はとても大切な直感ですが、そのまま動くと的外れな改善につながりやすくなります。まず必要なのは、「何が問題で、誰が困っているのか」を言葉にすること。課題と要望を分けて整理し、正しい問いを立てることで、改善の方向性が明確になっていきます。日常的にアクセスデータを見る習慣を持ち、小さな問いから始めることが、的確なWeb改善への第一歩になります。

記事監修

中谷 浩和

中谷 浩和

株式会社サンアンドムーン|代表取締役

1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。

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