今回のテーマは、集中力の設計です。「やる気が続かない」「取りかかるのに時間がかかる」——そんな悩みは才能の問題ではなく、作業環境の設計で解決できることがあります。時間術の視点から、デザイン・設計業務への応用を考えていきます。
デザインや設計の仕事では、長時間の集中が求められる場面が多くあります。とはいえ、人の集中力はずっと持続するものではありません。むしろ「長く頑張る」よりも「適切に休む」ことで、結果的にアウトプットの質が上がるケースも珍しくありません。私たちサンアンドムーンが制作の現場でも大切にしているのは、こうした作業リズムの設計という視点です。
集中力を保つには「休む」ことが鍵
そこで注目されているのが、「ポモドーロ・テクニック」という時間管理の方法です。25分の作業と5分の休憩を1セットとして、これを繰り返すシンプルな仕組みながら、集中力を効率的にコントロールする方法として、多くのクリエイターに活用されています。1セットごとに「1ポモドーロ」と数え、4セットごとに少し長めの休憩(15〜30分)を取るのが基本の流れです。
このテクニックは、もともと開発者やライターなど、集中力が鍵となる業務で広まりました。現在ではチーム作業やデザインワークなど、幅広い現場で取り入れられています。タイマーアプリや時計など手軽な道具で始められることも、導入のハードルが低い理由のひとつです。
プレゼン時間は18分——集中の限界を示す設計
Appleの新製品発表会や、世界的に有名なTEDトークでは、「1人の登壇者が話す時間」はおよそ18〜20分に制限されていることが多くあります。これは、聴衆が最も集中して内容を理解・記憶できる時間の上限がこのあたりだとされているからです。
人間の集中力は、時間が長くなるほど徐々に低下していきます。だからこそ、伝え方にこだわる企業や組織は「長く話す」よりも「集中して伝える」ことを優先します。これはポモドーロ・テクニックが掲げる「25分」という作業時間とも近く、集中力の持続限界を考慮した時間設計といえます。UI/UX設計においても、「短い集中で成果を最大化する」姿勢は、仕事の質を高めるヒントになります。
クリエイティブ作業との相性は抜群
ポモドーロ・テクニックの最大の利点は、「作業のリズムをつくること」です。特にデザイン業務は、集中と発想のバランスが重要です。集中しすぎて視野が狭くなったり、長時間作業による疲労で判断力が鈍ったりすることもあります。
25分という短い区切りは、脳をリフレッシュしながら集中を保つのに最適です。たとえば、アイデア出しのフェーズでは1ポモドーロごとに視点を切り替えることで、思考の幅が広がることがあります。UI/UX設計の現場でも、ワイヤーフレームの作成やリサーチデータの分析など、集中力を要する作業において、「やる気が続かない」「取りかかるのに時間がかかる」といった心理的ハードルを下げてくれる効果があります。
まず1ポモドーロから始めよう
ポモドーロ・テクニックは、特別なツールや訓練を必要とせず、今すぐ始められる方法です。25分だけタイマーをセットして、作業に集中してみる——それだけでも、集中への意識が変わります。継続していくことで、ポモドーロは「集中のスイッチ」として脳に定着し、タスクへの着手や継続が自然にできるようになります。
チームでの作業においても、ポモドーロ単位で「デザインレビューのタイミングを設定する」「作業ごとの集中時間を明確にする」といった活用が可能です。私たちサンアンドムーンでも、こうした働き方の工夫を含めて、質の高いクリエイティブ制作に取り組んでいます。
まとめ
集中力は才能ではなく、設計で高めるものです。短く区切ることで集中力はむしろ高まり、UI/UX設計の精度やスピードにも好影響を与えます。AppleやTEDが示すように、「伝える・創る」においても時間の設計は重要な要素です。まずは1ポモドーロから始めてみる——その小さな一歩が、集中と創造のリズムをつくるための第一歩になります。
記事監修

中谷 浩和
株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。
国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、 上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。


























