今回のテーマは、本能・行動・内省です。ノーマンが説明した、製品と人との関係を考える3つのレベルです。「見たときの印象」「使っているときの経験」「自分にとっての意味」と考えると、違いをつかみやすくなります。
友人からカップをもらった場面を想像してください。色や形が好きでも、持ち手は使いにくいかもしれません。それでも「自分のために選んでくれた物だから大切にしたい」と思うこともあります。身近なカップにも、使いやすさだけでは捉えられないUI/UXの視点があります。
前回の操作の方法と結果が分かる画面へ──実行と評価におけるへだたり|デザインの原則 #6では、操作と結果の理解を考えました。私たちサンアンドムーンがUX設計の出発点を「感想の中身を、具体的に確かめること」に置くのは、「良かった」の一言にも、見た目や使い心地、その人にとっての意味が含まれるからです。
この記事の要点
- 本能は即座の印象、行動は使う経験、内省は意味や価値に関わる
- 3つは順番に進む段階でも、良し悪しの順位でもない
- Webでも、操作と本人の言葉を確かめ、改善する場所を考える
本能──見たときに受ける印象
本能(visceral)は、見た目などから受ける即座の印象や反応に関わります。ノーマンはEmotional Design: People and Thingsで、第一印象や外観を中心としたレベルとして説明しています。
箱を開けてカップを見た瞬間に「かわいい」「すっきりしている」と感じることが例です。「本能」は、考えずに行動する人の呼び名ではありません。
行動──実際に使っているときの経験
行動(behavioral)は、製品を使っているときの経験に関わります。同じ公開文は、製品を使う経験全体として説明しています。カップなら、持ち上げて飲み、机へ戻すまでの扱いやすさや使い心地です。
色が好きでも、持ち手に指を掛けにくい場合があります。「見た目が気に入った」と「使いやすかった」を分ければ、好きな色を変える前に、持ち手の形や大きさを確かめられます。
内省──自分にとっての意味を考える
内省(reflective)は、製品や経験について意識して考え、自分にとっての意味や価値を受け取ることに関わります。
「友人が選んでくれたカップだから大切にしたい」という気持ちが例です。同じ形でも、思い出によって意味は変わります。ただし、贈り物に全員が同じ気持ちを持つわけではありません。
内省は使い終わったあとだけに起きるものでもありません。ノーマンの改訂版の序文は、目標や計画、結果の評価にも関係づけています。使う前に「今日は友人にもらったカップを使おう」と考える場面もあります。カップの話は、違いを説明するための本記事の例です。
Webでも、感想の中身を確かめる
仮のイベント申込ページなら、3つの見方で確かめられます。
- 本能:「落ち着いた印象」と感じたなら、どの色や写真からそう感じたか聞く
- 行動:日付を選び、入力して申し込むまでを見る。欄が見つからなければ、表示や位置を確かめる
- 内省:「学びたいことに合う機会を選べた」など、その人にとって申込が持つ意味を聞く
きれいな画面でも、操作に困ることはあります。「初心者向け」と案内するなら、内容や必要な準備がその案内に合うかも確認します。見た印象や申込の完了だけで満足したと決めず、操作中に起きたことと本人の言葉を確かめます。
注意点
3つのレベルは、必ず本能、行動、内省の順に進む段階ではありません。どれが優れているという順位でもなく、同じ人の体験を異なる面から考えるために使います。
印象や意味は人によって違います。一人の感想を、すべての利用者の気持ちとして扱わないことも大切です。
よくある疑問
見た目が良ければ、使いやすさも良くなりますか
見た目の印象と使いやすさは、分けて確かめます。好きな色でも持ち手が使いにくいカップのように、画面の印象と操作中の経験は同じとは限りません。
内省は、使ったあとの感想だけですか
使う前の目標や計画にも関わります。「今日はこのカップを使おう」と意味を考えることも例になります。
3つの見方は、Webの何に役立ちますか
感想が見た目についてなのか、操作についてなのか、その人にとっての意味についてなのかを整理できます。そこから、どの表示や操作を確かめるか考えます。
見た目と分かりやすさの関係は、サンアンドムーンが考える、WEBサイトにおける「わかりやすさ」と「美しさ」の両立 :ゲシュタルト原理をUI/UXに活かすでも紹介しています。UI/UXコンサルティングでは、画面と操作を見ながら、感想の中身を一緒に確かめます。
参考文献
この記事の作成に参照した資料
同じカップにも、色や形の印象、使い心地、自分にとっての意味があります。Webでも「良かった」という感想を具体的に聞くと、必要な改善を考えやすくなります。私たちサンアンドムーンは、使う人の操作と気持ちを丁寧に確かめます。感想を具体的な場面に結びつけることが、改善する場所を考える第一歩になります。
執筆・監修

株式会社サンアンドムーン|代表取締役
1976年創業のデザイン事務所を前身に、Webコンサルティング・UI/UXデザインを専門とする。国際標準のUX設計プロセスを学ぶ Google UX Design Professional Certificate を取得し、上級ウェブ解析士 としてデータ主導のサイト改善にも精通。Google Project Management Professional Certificateも取得。デザイン思考を軸に、ユーザー認知・行動・文脈からWebサイトの課題を捉え直し、成果につながる設計へ落とし込むことを使命としている。システム設計、フロントエンド技術、SEO・パフォーマンス改善まで技術知識を横断し、サイト全体を見通したディレクションを得意とする。自動車メーカー、銀行・クレジットカード、保険などの大手から中小企業まで、数値で検証しながら改善を積み重ねる実践的なコンサルティングを提供している。




































